またGNSSを活用した道路の料金収受システムの活用も広がっている。日本では高速道路の料金収受システムとしてはETCが普及しているが、シンガポールや欧州の一部の国・地域ではGNSSを活用した料金収受システムが構築されている。
GNSSの受信機を搭載した車載機によって走行した位置と移動距離から料金を課金するシステムであり、シンガポールにおいては三菱重工業によるシステムが導入されている。
欧州でもシーメンスが米国のGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGALILEOの3つのGNSSを活用した料金収受システムを構築しサービスを提供している。
この他にも物流業界で普及が期待されているドローンを活用した配送システムの中でもGNSSの活用が期待されているなど、自動車業界や物流業界で起き始めているイノベーションにはGNSSの活躍が欠かせない状況である。
衛星AISが提供する海の上の位置情報
AISはテロ対策や不審船、密漁船対策として、200総トン数以上の国際航海をする船舶、500総トン数以上の非国際航海をする船舶、国際航海をする全旅客船に対して搭載が義務づけられている装置である。本装置から送られてくる信号を地上の受信局で受け取ることで、船舶の情報を取得し不審船や密漁船の監視に役立てている。
しかし地球が丸いことから、沖合80キロ弱から発せられる信号しか地上で受信することができず、それより遠い海上にいる船舶が出すAIS信号は受信できないことが大きな課題となっていた。
これを解決したのがAISの受信機を搭載したAIS衛星であり、遠洋に存在する船舶から発せられたAIS信号を衛星で受信し、陸上にそのデータを送信することで、陸上から80キロより離れた位置にある船舶や、太平洋のど真ん中を移動中の船舶の情報を得られるようになった。
図表 衛星AISの利用イメージ
衛星AISの活用は先に述べた通りテロ対策や不審船の把握などの安全保障上の用途が見込まれる。その他にも商用目的の貨物船や客船の位置情報の把握をすることで、予定通り航海がされているのか、目的の港に定刻通り到着するのかなど運行状況の管理への活用が期待できる。
さらにリモートセンシング衛星から得られる画像情報や、気象情報などと組み合わせることで安全な航海ルートの提供できるようになると見込まれている。