前回はカメラやセンサなどを使い、遠隔から画像を撮影する技術である「リモートセンシング」分野についてお伝えしたが、今回は、人工衛星を活用して地上の位置情報を把握する「衛星測位」分野のビジネスについて説明していく。
既に身近な衛星測位
地上の位置を把握する人工衛星で最も有名なのは米国のGPS(Global Positioning System)を構築する人工衛星であろう。GPS衛星はカーナビゲーションやスマートフォンにおけるGoogle Mapなどを活用した位置情報の把握など、既にわれわれの生活で欠かすことのできないサービスの一部である。
特に近年はスマートフォン向けのアプリで位置情報を活用したサービスが数多く開発されている。2016年話題となった位置情報を活用したゲームである「Ingress」や「Pokémon GO」、また自身の位置情報を友人などに共有できる「LINE HERE」など、GPSから取得できる位置情報を活用したアプリは数多く存在する。
またこの他にもGPSから得られる位置情報を活用した製品やサービスは数多い。例えば自動走行するトラックや農機(トラクターなど)、航空機における空路上の位置情報の把握、測量機器、さらにGPSは非常に正確な時刻情報をもとにして位置情報を提供していることから、その正確な時刻情報は金融取引などにも活用されている。
図表 幅広い産業に活用される位置情報サービス
GPS依存からの脱却
GPSは世界に広く普及しておりさまざまな用途で利用されているものの、GPSは軍事目的に開発された経緯もあり米国防総省が管轄している。そのため現在は無償で一般に提供しているものの、将来的に安全保障上の問題などから利用を一時的に制限されてしまう可能性もゼロではない。実際にコソボ紛争の際に米国は一時的にGPSの精度を低下させ、その影響を受けてヨーロッパの民間航空機が大きな影響を受けたと言われたという説がある。
また近年はサイバーテロなどの脅威も増していることから、安全性・正確性の観点からGPSに依存するではなく、各国で独自の衛星測位システムを構築する動きが活発化している。
図表 各国が整備する衛星測位システム