「ビジネスとしての宇宙」に本気になった日本政府
宇宙産業ビジョン2030の表紙(内閣府HPより)
宇宙政策委員会宇宙産業振興小委員会(内閣府)は5月12日、「宇宙戦略ビジョン2030」を公表した(6月9日までパブリックコメントを募集中)。日本の宇宙政策は、以前から宇宙基本計画がそのベースとなってきた。この計画は宇宙政策全般をカバーし、特に国家ミッションや学術目的の宇宙開発に重きが置かれていた。
一方で、今回の宇宙産業ビジョン2030は、「ビジネス視点で見た宇宙」に主軸を置いたものである。宇宙産業を日本の経済・産業の革命の旗手として位置づけ、宇宙産業の振興が他産業の成長や新産業の創出につながるという考えの元、まとめられた。
公開早々筆者も目を通したが、「○○が問題である」という、これまでの日本の宇宙業界の課題を正面から問題提起する表現が目立ち、また「ニュースペース(新しい宇宙産業)」に言及している。その上で、ITやベンチャー、サービスといった、日本の宇宙業界ではこれまであまり馴染みのなかった言葉も頻出するなど、欧米各国から始まった世界的な宇宙ビジネス変革に対する問題意識と、これまでの固定観念にとらわれないチャレンジをする意思を、強く感じさせる内容だ。
この宇宙産業ビジョン2030は、2016年に成立した宇宙活動法に続いて、「ビジネスとしての宇宙」の方向性を社会に広く発信し、これまで宇宙とは関係の薄かった産業や人々の関心を引き付けるインパクトがあると見ている。
筆者が構成員を務める総務省「宇宙xICTに関する懇談会」でも、今夏の公表に向けて懇談会のとりまとめを進めてきたが、早速、今回の宇宙産業ビジョン2030を受けて、産業としての方向性をしっかりと打ち出していくことになった。