次世代ITに呼応する宇宙ビジネス

ムーアの法則的に広がる宇宙ビジネス--“一巡”したベンチャーと日本の存在感

佐藤将史

2017-08-31 07:00

“宇宙ベンチャー”を世に広めた始祖、NewSpaceカンファレンス

 非営利の民間団体、宇宙フロンティア財団(Space Frontier Foundation:SFF)が毎年開催しているNewSpaceカンファレンスが、この6月27~29日、San Franciscoのダウンタウンで“NewSpace 2017:Convergence”として開催された。

 NewSpaceカンファレンスは、文字通り「新しい宇宙」に重点を置き、特にスタートアップ企業を主役に据えたベンチャービジネスのカンファレンスである。現在の宇宙ベンチャーブームに沸く5年ほど前までは、宇宙ベンチャーにフォーカスしたイベントは世界にほとんど存在しなかった。

 宇宙ビジネスカンファレンスと銘打つイベントのほとんどが、宇宙機関や軍関係の公的ミッションに重きを置いており、政策的な話題が大部分を占めていた。その中で、NewSpaceカンファレンスは異彩を放ち続けてきた。

 筆者は、NewSpace2015から3年連続参加しているが今回、特にアジアからの参加者が増えており、主催者によれば、単独国として米国に続き、最も多くの参加者が来ているのが日本である。2016年から今年にかけて、韓国の関係者が増えているのも目に付いた。


NewSpace 2017参加者の出身国:アメリカに次いで日本からの参加者が目立った(ピンの数)

 NewSpaceカンファレンスは、その知名度を世界的に広げている。この11月には初の海外進出となる“NewSpace Europe”がルクセンブルグで開催されることを登壇したEtienne Schneider同国副首相が発表した。筆者はアジア域においてもNewSpaceと連携したイベントなどがあれば、と感じている。

転換期にある米国の宇宙ベンチャー業界

 一方で、この5年程度の間に、特に米国を中心に、宇宙ベンチャー関連のカンファレンスが相次いで設立されている。日本でも筆者も理事として運営に関わる“SPACETIDE”が発足するなど、NewSpaceに類似のカンファレンスは増加傾向にある。

 今回のNewSpace2017では、そのような背景を踏まえて、新しい方向性を模索していることがうかがえた。最も特徴的だったのは、過去2回と比べ、宇宙ベンチャーの登壇が少なく、政府機関や投資家、NPOなどの非営利団体など、宇宙ベンチャービジネスの支援者の登壇割合が比較的高かった点である。

 これまでNewSpaceカンファレンスは、ブレーク寸前の“旬”のベンチャーを露出させることで、注目度を高めてきた。Elon MuskのSpaceX、Jeff BezosのBlue Origin、Rocket Lab、Planet、Spire……などだ。

 現在、業界で名を馳せるほとんどの宇宙ベンチャーが過去に登壇者やスポンサーとしてNewSpaceカンファレンスに協力している。その点では、NewSpace 2017ではインパクトある旬のベンチャーの登壇は比較的少なかった(Blue OriginやOneWebが登壇したが、今や両社は“頭一つ出たベンチャー”となっており、この文脈には当てはまらない)。

 これは、単に宇宙ベンチャーカンファレンスが増えたということだけではなく、宇宙ベンチャー業界が転換期を迎えていることの証左だったと筆者は考える。

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