次世代ITに呼応する宇宙ビジネス

ムーアの法則的に広がる宇宙ビジネス--“一巡”したベンチャーと日本の存在感 - (page 2)

佐藤将史

2017-08-31 07:00

 特にこの1年程度で、米国の宇宙ベンチャーの重点が、従来のロケット・衛星の製造・打ち上げから、宇宙データ利用と深宇宙のビジネスに転換していることが垣間見えた。

 これまでは、小型・軽量ロケットや小型衛星によるコンステレーション(衛星を複数打ち上げ1つのシステムとして運用する衛星群計画)など、革新的なハード開発を行うベンチャーが多く登場したが、NewSpace 2017ではその色が薄まり、衛星データをどのように活用するかという議論が強調された。

 そのキーワードとなったのが、IT業界でもおなじみの「Moore’s Law(ムーアの法則)」である。キーノートに登壇したシリコンバレーの大物投資家Steve Jurvetson氏のプレゼンにはじまり、複数人が度々、この法則に言及した。

 ムーアの法則自体は、「18カ月で半導体の集積率が2倍になる」という経験則である。このカンファレンスでは、IT業界におけるスーパーコンピュータやスマートフォンの登場になぞらえ、「技術的にできることが広がる」「技術的なイノベーションが社会に普及する」という意味合いで用いられていた。


大物投資家Steve Jurvetson氏がキーノートスピーカーを務めた

 Jurvetson氏は、計算機や人工知能の性能向上によって最も成長するビジネスの代表例として、高精度な将来予測シミュレーション関連のビジネスを挙げた。同氏は、宇宙データはその中で重要な構成要素となる可能性があることを指摘し、今後は、このように他産業と宇宙ビジネスで培われた技術やデータが連携していくことで価値が生まれると述べた。

 SFF理事であるAmaresh Kollipara氏も同様にムーアの法則と宇宙×他産業に触れ、「今の時代はSpace 3.0である」と説いた。Kollipara氏は、政府による宇宙開発をSpace 1.0、ビリオネアたちによる宇宙ビジネス参入をSpace 2.0、そして、ユーザーに価値を届け数十億ドルの市場を形成しようとする現在の動きをSpace 3.0と整理している。

 そのSpace3.0の象徴として登壇をしたのが、衛星データ解析ベンチャーとして注目を集めるOrbital Insightの最高経営責任者(CEO)を務めるJames Crawford氏である。


Orbital Insightによる衛星データ解析のターゲット

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