2016年、流行り始めた「宇宙ビジネス」
「宇宙ビジネスって何なんですか?最近よく聞くのですが、いまいちイメージが湧かなくて」――。2016年は日本で「宇宙ビジネス」という単語が大きく普及した1年だった。その一方で、宇宙ビジネスとは何を指しているのか、宇宙に馴染みのない多くの人々には、具体像が分かり難いようである。
この連載では、宇宙ビジネス分野で国内外で起きている実例をお伝えしていくことで、宇宙ビジネスとは何なのか、読者の皆さんに紹介する。
「宇宙ビジネス」って何だ?
皆さんが思い浮かべる宇宙ビジネスとは、何だろう。「宇宙ビジネスと言ったら、宇宙旅行でしょう」、私の周りで最もよく聞くのはこれである。実際、10年ほど前まで「宇宙ビジネス」イコール「宇宙旅行」と言ってもあながち間違いではないほど、まだ宇宙ビジネスは習熟していなかった。一方、最近よく耳にする宇宙ビジネスは、宇宙旅行以外のさまざまなビジネスを含んだ、幅の広い産業全体を指す概念の言葉である。
宇宙ビジネスという言葉を理解する上でポイントとなるのは、大きく2つ、(1)あらゆる宇宙開発・利用が事業領域、(2)主役は企業、顧客は民間(BtoBやBtoC)である。
あらゆる宇宙開発・利用が事業領域
そもそも宇宙ビジネスにはどのような種類があるのか。その整理から入ることが必要だろう。米国を中心に世界的に宇宙ビジネスへの投資活動を行う投資家団体Space Angels Networkでは、投資対象となる宇宙ビジネスを「地上ビジネス」「宇宙空間ビジネス」「天体ビジネス」と分類している(図表1)。
宇宙ビジネスを「地上ビジネス」「宇宙空間ビジネス」「天体ビジネス」と分類(図表1)
地上ビジネス
通信衛星やリモートセンシング衛星(リモートセンシング:遠隔地から画像を撮影すること)を活用して地上のビジネスにつなげるための、ロケットや衛星の製造・打上げ・運用などの事業を指す。既にビジネス化がある程度進んでいる領域であり、年間2000億ドル以上と言われる宇宙産業の市場規模のほとんどは、現時点では、ここから来ている。
日本でも、三菱重工、IHIエアロスペース、三菱電機、NECを中心とした大企業がいることに加え、堀江貴文氏が出資するロケット打ち上げベンチャーのインターステラテクノロジズや、東大発の衛星ベンチャーであるアクセルスペースなどの宇宙ベンチャーがおり、参画するプレイヤーの多い領域である。