市場調査会社のTechnavioは、世界的なDevOps市場は2020年まで年平均成長率19%で成長していくと予想している。金融業、医療業界、製造業、サービス業など、さまざまな業界がDevOpsの手法を導入して、アプリケーションのリリースに要する時間を短縮しようとしており、公的部門でも同様の動きが見られる。
企業はなぜこれほどDevOpsに引かれるのだろうか?
DevOpsという言葉は、「ソフトウェア開発」(Development)と「IT運用」(Operations)を組み合わせたものであり、ソフトウェアの開発者と、データベース管理者やネットワーク管理者、セキュリティ専門家、システムプログラマーなどのITの運用を支えるプロフェッショナルの間で、積極的で連続的な連携を促す手法と、それを支えるツールのことを指す。DevOpsの手法を用いると、アプリケーションやシステムの開発を進めるのにあたって、さまざまな役割のスタッフが連携を取ることになるが、各部門や専門的な部署は、技術的なタコツボの中に閉じこもる傾向がある。これはITの世界でも、変えることが非常に難しい部分の1つだ。
DevOpsは、その困難を乗り越えて、実際に有効に働くのだろうか。
米国の大手保険会社Nationwideは、DevOpsによってシステムのダウンタイムを70%減らし、アプリケーションのコードの品質を50%改善した。またオランダの金融機関Rabobankは、DevOpsのツールと手法を用いることで、アプリケーションの導入にかかる時間を60%短縮した。これによって、ソフトウェアの開発コストは減少し、アプリケーションのリリースも加速された。
しかしDevOpsなどの方法論が成功したことで、DevOpsを実践できるエンジニアの奪い合いも激しくなっている。この記事では、企業がこの売り手市場でDevOpsの専門家を獲得するために使える戦略やベストプラクティスを紹介する。
1.DevOpsのビジョンを明確に提示できるように備える
これは仮想化やクラウドなどの分野でもありがちだが、DevOpsという言葉の意味は人によって異なる。このため、人材を募集する前に、所属組織におけるDevOpsのビジョンがどのようなものであり、どう活用しようとしているかを明確にしておくことは極めて重要だ。組織によっては、DevOpsはさまざまな専門性を持つ人々がより協力的に働けるようにするための、IT部門の組織文化面での変化を目指すもので、DevOpsのツールはその目標を助けるためにある、という場合もある。あるいは、DevOpsの目標が、システムのプロビジョニングなどのITプロセスを自動化して、アプリケーション開発プロセスを加速することである場合もあるかもしれない。DevOpsのエンジニアを募集する前に、必ず所属組織でDevOpsどう使おうとしているかを明確にすべきだ。ほかのITプロフェッショナルと同じように、DevOpsのエンジニアにも、それぞれ個人として、あるいはプロフェッショナルとしての目標がある。エンジニアの関心や目標が企業の目標と合致しなければ、その人材は早々に去ってしまうだろう。
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