5. アップタイムと災害復旧(DR)に関する懸念
過去にはクラウドベンダーにおける障害や脆弱なガバナンスにより、企業のIT部門はクラウドを災害復旧時のフェイルオーバーシステムや週7日・1日24時間のアップタイム、さらには上位のシステムパフォーマンスを求めて利用することを敬遠していた。その頃よりクラウドベンダーは進化したものの、今でもこうしたパフォーマンスに一部課題があることも事実だ。現在利用しているクラウドベンダーが、システムパフォーマンスやDR、フェイルオーバー面でお手本のように稼働していたとしても、クラウドベンダーのデータセンターの基盤となるハードウェアやソフトウェアが、自社で運用しているデータセンターのハードウェアやソフトウェアと完全に同期しないこともあるのだ。ハードウェアやソフトウェアでのこうした小さな差異によって、システムのパフォーマンスが大きく低下することもある。
6. 内部スキルセットやサポートの重要性
IT部門がヘルプデスクのチケットに対応するまで時間がかかりすぎると文句を言う内部ユーザーもいるだろうが、廊下の向こう側にあるITデータセンターの担当者に電話をかけて呼び出す方が、地球の裏側にいるクラウドプロバイダーのサポートセンターに電話をかけて自動応答システムやチャットシステムと話すよりもずっといいと考える人がほとんどだ。システムが週7日・1日24時間稼働し、(ホテルや航空会社の予約などのように)迅速な対応が求められる業界の企業では、自社システムを自社スタッフでサポートすることが不可欠なのだ。こうした企業の多くは、スピードや回復機能を上げるため自社システムを微調整している。この作業は、自社アプリケーションのすべてを知り尽くしたITスタッフの中にいる熟練のプロによるもので、一般的なクラウドサービスで提供できるような技能レベルではない。こうした企業では、システムを自社データセンターで維持するか、クラウドのコロケーションサービスを利用し、システムを自社スタッフで運用することを選ぶだろう。
おわりに
Gartnerでは、2017年にパブリッククラウドサービス市場だけで18%の成長を見込んでおり、2468億ドルに達すると予測している。この数字は、企業のIT計画においてクラウドコンピューティングの力が強いことを示している。ただ、企業がより多くのコンピューティング機能をクラウドに移行し、データセンターへの投資が弱まったり横ばいとなる中、重要なIT資産をオンプレミスに維持しておく理由が数多くあることも事実で、この状況がすぐに変わることはないだろう。
現在IT関連の意思決定者にとって好都合なのは、クラウドとオンプレミスの両方の良い面を利用できることだ。全社のITインフラにおいて、プライベートクラウド、パブリッククラウド、オンプレミスコンピューティングを組み合わせたハイブリッドコンピューティング戦略を進めることで、両方の良い面が活用できる。企業の85%が自社ITシステムに複数のクラウドを利用していると答えたのもそのためである。内部データセンターを保持していくことも、この戦略と同様極めて重要なことなのだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。