「関係性を改めなければ浸透しない」--6年のはたらき方改革で学んだこと

大石 良

2017-08-29 08:00

 前稿の通り、われわれサーバーワークスでは、この6年間、東日本大震災とその後の退職ラッシュをきっかけに、リモートワークをはじめとするはたらき方の改善を繰り返してきました。

 ところが、リモートワークを進めるに当たって、新しい課題に直面するようになりました。それは「信頼関係」と「評価」です。

信頼関係

 リモートワークを進めてみても、意外なほど縦の信頼関係は従前と変わりませんでした。リモートワークにする分、メンバーもマネージャーに意識して業務内容をレポートするようになったり、リモートといえども必ず5分の(リモート)ミーティングを入れるようにするなど、さまざまな工夫をしたのです。

 この結果、同じ職場で顔を合わせているときよりもきちんと意思疎通ができるようなケースも見受けられました。実際、1カ月に2~3回程度しか出社しない「リモート課長」もいますが、意思疎通も、価値観の共有もきっちりできていると思います。


 それよりも問題になったのは、「横の信頼関係」です(ここで言う「横」とは、直接のライン以外の関係性、という意味です)。

 それまで顔を合わせることが前提だったチームで、急にリモートワークを取り入れたりすると、「あの人は何もしていないのにまたリモートワークなのか」という、さい疑心が生まれてしまいます。特にまずいのが、朝になって突然「今日はリモートワークをします」というような行動です。

 これは他の従業員から見たときに「寝坊したからリモートワークをしている」としか認識されず、「リモートワーク=サボり」という印象を根付かせてしまいます。

 われわれは、リモートワークをする際に「必ず前日までに、どの業務を、なぜリモートワークにするのか申請する」ということを徹底し、かつこの情報をオープンにしています。これにより、リモートワークは決してサボりの道具などではなく、生産性を高めるために有用な仕組みだと全員で共有しているのです。

評価

 もう一つは「評価」です。評価を通じて、「会社はちゃんと成果で判断していて、リモートワークをしたり昼寝をしたりしているかどうかは関係がない」というメッセージをきちんと伝えるようにしました。

 昼寝スペースや、畳で横になりながら仕事をする場所があっても、本当にそこが使われるためには、心理的な安全性が確保されている必要があります。「勤務態度という謎の評価基準で見られている」という予断があるようでは、せっかくのそうしたスペースも使われなくなってしまいます。

 われわれは、評価の軸を明確化し(スピード、オーナーシップ、顧客視点、成果)、さらに評価のプロセスを年2回にすることで、リモートワークでもしっかりと評価をし、その軸は「成果」であることを共有しています。「昼寝」「出社するかしないか」は評価には関係がないと明文化しているのです。

 こうした取り組みによって、全社で「柔軟なはたらき方を実現し生産性を高めることが求められている」というメッセージを共有できたと考えています。

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