本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米Palo Alto NetworksのMark D. McLaughlin 会長兼CEOと、米Veritas TechnologiesのSimon Jelley Backup Exec製品群担当ゼネラルマネージャの発言を紹介する。
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米Palo Alto NetworksのMark D. McLaughlin 会長兼CEO
「高度化するサイバー攻撃にはセキュリティベンダー1社では対応できない」
(米Palo Alto Networks Mark D. McLaughlin 会長兼CEO)
パロアルトネットワークスが先頃、ユーザー企業を対象とした年次イベント「Palo Alto Networks Day 2017」を都内ホテルで開催した。冒頭の発言は、同イベントで基調講演を行った米国本社のMark D. McLaughlin(マーク・マクローリン)会長兼最高経営責任者(CEO)が、同社が展開している戦略の基本的な考え方を述べたものである。
McLaughlin氏は講演の中で冒頭の発言を幾度も繰り返した。Palo Alto Networksもセキュリティベンダーの1社なので、そのままだと頼りなさそうに聞こえる発言だが、もちろん真意は同社の事業戦略そのものに反映されている。その内容は次のようなものだ。
McLaughlin氏によると、Palo Alto Networksはこれまでサイバー攻撃に対してさまざまなセキュリティ機能を柔軟かつ効率良く利用できるようにしたセキュリティプラットフォームを追求してきた。その過程で3つの進化があったという。同社がまず起こした1つ目の進化は、ネットワーク向けセキュリティソリューションをSaaSの「自動化された脅威防御サービス」として一元的に提供したことである。
同氏によると、この1つ目の進化がおよそ10年前で、2つ目の進化は3年ほど前に押し進めた。それは、ネットワーク向けだけでなく、エンドポイント、IoT(Internet of Things)、クラウド向けなどのセキュリティソリューションも同じSaaSサービスとして一元的に提供できるようにしたことだ。つまり、セキュリティプラットフォームとして対応する利用環境が大きく広がったわけである。
そして、3つ目の進化がまさに今、強力に押し進めている戦略だ。図に示されているのは、同社が展開するセキュリティプラットフォームの仕組みである。図の中央にある雲の形が中核となるSaaSサービスで、下の3つの箱が利用環境を示している。さらに3つ目の進化として同社が取り組んでいるのは、この図でいうと雲の上に緑色で描かれた部分である。これは何か。同氏は次のように説明した。
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図:Palo Alto Networksにおけるセキュリティプラットフォームの仕組み
「これまで4万2000社を超えるお客様にこのセキュリティプラットフォームを利用していただき、セキュリティ対策に有効な大量のデータを蓄積してきている。そこで今度は、この大量のデータを分析するなどして脅威の予測などを行えないかと考え、これらのデータを開放して誰でもアプリケーションを開発し適用してもらえるようにした」
これが、セキュリティプラットフォームの一環である「アプリケーションフレームワーク」戦略である。まさに冒頭の発言を踏まえたユニークな取り組みだが、果たしてエコシステムとしてどこまで広げていけるか。注目しておきたい。