次世代の「Azure Machine Learning」
MLとAIは予測機能や、パターン/例外の洗い出し機能、意図の推論機能、リコメンデーション提供機能といった「スマート」なシステムの要と言える。Microsoftは数年前に、「Azure Machine Learning」(Azure ML)と「Microsoft Azure Machine Learning Studio」(Azure ML Studio)によって、クラウドにMLやAIのモデリング機能を搭載した。しかし、最初の世代はMicrosoftのクラウドサービスであるAzureのみをサポートしていた。次世代版のAzure MLは、今回のIgniteで発表され、現在パブリックプレビュー段階にある3つのコンポーネントを通じることで、企業に対して選択肢を提供するものとなる。
- 「Azure Machine Learning Workbench」(Azure ML Workbench)はデータラングリングと実験管理のためのクロスプラットフォームクライアントだ。これは、モデルの作成に向けた作業の第1段階、つまりデータの準備を実施する必要のある開発者やデータ科学者を念頭に置いたものであり、Windowsや「iOS」を搭載したデバイス上で動作する。ユーザーは、スケーラビリティに富んだ広範なデータ源を取り込み、該当データのサンプルや統計値、分布情報を確認できる。このツールは、例を用いることで、実行させたいクリーンアップと正規化の手順を学習させたうえで、さまざまな規模で繰り返し実行するようにできる。こういった手順は、データの透明性やリニエージ(データ系列)を確保するために記録される。これらによって、該当データを使ったモデル化に向けた実験が可能になる。
- 「Azure Machine Learning Experimentation」(Azure ML Experimentation)サービスは、さまざまな規模の協調型モデル開発をサポートするためのものだ。このサービスにより、Gitリポジトリとコマンドラインツールを使用してモデルの実験と訓練が管理できるようになる。また、実験で使用したコードや設定、データとともに、モデルやログ出力、重要なメトリクス、モデルの改訂履歴も追跡できるようになる。その結果、しばしば規制の厳しい業界で要求されるような、時系列に沿ったモデルの透明性も保証される。Azure ML Experimentationサービスは、Pythonのほか、「Microsoft Cognitive Toolkit」(CNTK)だけでなく、「TensorFlow」や「Caffe」「PyTorch」「MXNet」「NVIDIA DIGITS」といった、さまざまなフレームワークをサポートすることで選択肢を広げている。また、複数の配備形態も選択できる。Dockerコンテナは、モデルとデータのガバナンスや、監査能力、可視性を維持しつつ、さまざまな環境に向けたポータビリティを重視する際に用いられている。Azure ML Experimentsは、ローカル環境やリモートからの実行や、汎用仮想マシン(VM)上での実行、「Microsoft Data Science Virtual Machine」上でのスケールアップ、(「Azure HDInsight」環境内の)「Apache Spark」上でのスケールアウトのほか、GPUを活用したVM上での実行すら可能となっている。
- 「Azure Machine Learning Model Management」(Azure ML Model Management)サービスは、配備と運用のためのサービスであり、ホスティングやバージョニング、マネジメント、モニタリングをサポートしている。ここでも、SQL Server 2017のデータベース内機能や、VM内、Spark上、Azureクラウド内のほか、Dockerコンテナを実行できるさまざまな場所において多くの選択肢が用意されている。