反面教師としてのダークパターン
こうしたダークパターンがユーザーにとって嫌なものであることに異論はないであろう。ダークパターンを使ったウェブサイトやアプリケーションを提供、開発している人たちも、自分がユーザーとしてそれらのパターンと相対したくはないだろう。ユーザー側ではなく、提供側の都合が極度に優先されていることがあからさまであり、ユーザーは不利益を被るので、良い UX/UIデザインの対極をいくものと言える。
良いUX/UI を志すのであれば、ダークパターンを反面教師として、そのような要素がなるべく入らないように考え、デザインしなければならない。すなわち、必要な情報はユーザーに的確に伝わるようにし、なるべくユーザの意図と違う操作が行われたり、意図しない状態になったりしないようにというようなことである。
現在ダークパターンとして取り上げられているタイプ以外の新たなダークパターンもあるかもしれない。 既存のダークパターンの要素があるかどうか以外にも、思わぬところでユーザーに無用の不利益を強いていないか、ということを、よくチェックせねばならない。
提供側が短期的・近視眼的な利益を求めすぎると、ダークパターンのようなものに手を染めやすくなるのだろうが、 中長期的には、「良いUX」を常に心掛けることが、より多くの利益につながるはずである。「UXを重視する」ことを掲げるのであれば、こうした悪い事例からも多くを学ばねばならない。
- 綾塚 祐二
- 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修了。ソニーコンピュータサイエンス研究所、トヨタIT開発センター、ISID オープンイノベーションラボを経て、現在、株式会社クレスコ、技術研究所副所長。HCI が専門で、GUI、実世界指向インターフェース、拡張現実感、写真を用いたコミュニケーションなどの研究を行ってきている。