Oracle OpenWorld

「Data Cloud」とセットで展開するOracleのAI--差別化はクロスアプリケーション - (page 2)

末岡洋子

2017-10-13 06:00

--提供形態は?

Berkowitz氏 既存製品のオプションとして提供する。

 メリットはすぐに使えることだ。もしデータサイエンティストを雇って自分たちで構築すると、半年から1年もの作業になる内容を事前にパッケージにしている。1~2週間で利用できるようになり、企業はイノベーションに投資できる。

--ユーザーが自分の持つ経験や知識をシステムに伝えることはできるのでしょうか?

Berkowitz氏 可能だ。ビジネスユーザーはたくさんのダッシュボードを利用して、何があるのかを見られる。われわれが心がけたのは、ブラックボックスのようなAIではなく、制御できるAIの提供だ。単にダッシュボードを提供するだけでなく、ユーザーが影響できるようにした。

 例えば、ハリケーンが起こった直後、「被災地の人に何かを提案するのはしばらくやめよう」といったことは、現在のAIにはできない。このように機械学習のためにユーザーが後ずさりするのではなく、アクティブにエンゲージするというのがわれわれのコンセプトだ。ここもAIを展開する多くの企業とは違う視点だ。ユーザーがシステムにフィードバックを送ることで、システムは継続的に学ぶことができる。

 インプットは、現時点ではスライダーとチェックボックスだが、将来的に自然言語で利用できるようにしたい。

--Data Cloudは興味深い動きですが、ここでの戦略は?

Berkowitz氏 私はData Cloudの担当ではないが、Data Cloudの事業は成功しており、継続してバリューを提供する。

 コンシューマーに加えて、ERP、SCM、HCMなどのドメインで提供するにはビジネスについて知る必要がある。Data Cloudには人の情報があるが、企業に関する情報、例えば、誰が誰と取引しているのか、財務リスクは何か、どうやって、いつビジネスしているのかといったことは、Dun & Bradstreetなど複数のデータ企業と提携し、これをアプリケーションに組み込んでいく。

 例えば、海外展開する日本企業は、相手が安全な取引先かなどのリスクを知りたいと思っている。Oracleのシステムがビジネスデータを理解し、意思決定の文脈で利用できるようにする。

 また、仮に取引先の幹部が変わるといった状況によってリスクが高いと判断したとしよう。すると、その取引先の優先順位を低くし、その他の取引先を探すことを提案する。このようにAIは、営業担当者を置き換えるのではなく、営業担当者がより効率的に、質の高い仕事ができるように支援する。

--今回はAIをHCMやSCM、ERPなどに拡大しました。次の計画は?

Berkowitz氏 まずはユースケースを現実の形にすることだ。そして、顧客に成功してもらう。

 これは簡単ではない。パッチの適用や新しい機能の開発と提供といったことは、われわれがコントロールできる部分だが、顧客がビジネス上の価値を実感してもらうためには、企業の中で使ってもらう必要がある。Oracleは「顧客サクセスチーム」を組んでおり、顧客の成功を支援している。

--Adaptive Intelligent Appsは日本でどのように展開しますか? 顧客サクセスチームも日本で展開しますか?

Berkowitz氏 まずは米国や欧州から提供していく。日本では、言語対応に加えて、データセンターのカバレージを確実なものにしてから展開する。

 日本でも顧客の成功のためのチームを組んでいる。日本でAdaptive Intelligent Appsをロールアウトする際、同時に顧客サクセスチームもそろえる計画だ。

 Oracleは日本で成功している歴史があり、展開を楽しみにしている。日本は製造業が多いが、Adaptive Intelligent AppsはBtoBでも利用できる。

--Adaptive Intelligent Appsの実証は、どの業界で展開しているのでしょうか?

Berkowitz氏 小売業が多い。既存の物理店舗中心の顧客と、ECあるいは両方をしている企業だ。

 OpenWorldでは、Moleskineの事例を発表した。Moleskineはオンラインと物理店舗の両方を持ち、オンラインショップでのお勧めなどを通じて、最終的に物理店舗へ足を運んでもらう。同社は750以上の製品を持ち、2万3000のポイントで物理的に購入できる。

 Moleskineの手帳は、1年に1、2度買う顧客が多いが、アクセサリなどの商品があると、ショップに行く回数が増える。新規顧客の獲得コストは高く、既存顧客が来る回数を2回から3回目に増やすというのが同社の狙いだ。

 35カ国、10言語、15の通貨を利用しており、マルチ言語、マルチ通貨という点でもOracle Commerce CloudとOracle Marketing Cloudの機能を示す例となる。

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