「コンピュータとデザイナーが共同制作者として一体化する。人間の限界を超えて、何百、何千通りものデザインの選択肢が得られる。人の想像を超えた、典型的でない形状や、有機的な形状が得られる」――。
オートデスクでFrontline&製造アカウントエンジニアマネージャーを務める加藤久喜氏
オートデスクは2017年内に、“ジェネレイティブデザイン”と呼ぶ、デザインを自動化する機能を搭載したCAD(コンピュータによるデザイン)ソフトの新製品「Autodesk Generative Design」を提供する。
従来のように人がデザインするのではなく、コンピュータのアルゴリズムがデザインする。与えた条件に合致した複数のパターンを自動的に抽出する。椅子であれば、人が座る形状でなければならず、荷重に耐える必要がある。
条件に合致した複数のパターンを提示するので、これらの中から最終的に人が選ぶ。例えば、軽いけれどコストや時間がかかるパターンや、軽くないけれど製造原価を下げられるパターンなど、さまざまなバリエーションを提示する。
デザインの創造性が高まる点が最大のメリット
ジェネレイティブデザインの最大のメリットを「デザインの創造性が高まること」と説明するのは、オートデスクでFrontline&製造アカウントエンジニアマネージャーを務める加藤久喜氏。「人の想像を超えたデザインが得られる」(加藤氏)
これに対して、従来のCADソフトは製図ソフトでしかなかった。デザインをするのは人間のデザイナーやエンジニアであって、コンピュータは作図や文書作成を支援するだけだった。「人がデザインしていたので、限定的なデザインしかできなかった」(加藤氏)
ジェネレイティブデザインで製造物をゼロからデザインした例として加藤氏は、自転車部品(ハンドルバーを連結するステム)を設計した例を挙げた(図1)。強度を保ちつつ、軽量化する必要があった。設計案をコンピュータに教えたところ、ミニマムな形状を提示してくれた。
図1 自転車の部品を1からコンピュータに設計させることができる
機能性や品質に優れた付加価値の高い製品を生み出せることもジェネレイティブデザインのメリットだ。製造物を手にした顧客の満足度が上がる。もちろん、デザインの自動化による生産性の向上やコスト削減の効果も大きい。
肉抜きして軽量化する技術は提供済み
ジェネレイティブデザインには、いくつかの種類がある(図2)。
図2 ジェネレイティブデザインには大きく4種類がある
自転車部品の事例のように形状をゼロから形成するやり方は「フォーム形成」(Form Synthesis)と呼ばれ、今後のジェネレイティブデザインの本流となる。同機能は、2017年内に提供するAutodesk Generative Designで提供する。現在は技術プレビューを提供している。
既に製品化している技術の1つが、「ラティス形状」(Lattice & Surface)と呼ぶやり方だ。ある製品について、外部の形状を変えることなく、内部を格子状に肉抜きして軽量化する。同機能は、3次元CADソフト「Autodesk Netfabb Optimization」で提供している。
「トポロジ形状」(Topology)では、ラティス形状とは反対に、製品を外側から削っていくことによって軽量化する。CADソフトの「Autodesk Netfabb Optimization」と「Autodesk Inventor2016」で提供している。
「骨梁形状」(Trabecular structures)という方法もある。骨のように空洞が空いた構造を作って、強度を保ちながら軽量化する。主に人口骨の製造に使われる。医療向けのCADソフト「Autodesk Within Medical」で提供している。