ZDNet:評価会のポイントはどんなことでしたか。
「評価者は被評価者と同じチームからは選ばない」ことが、重要なポイントです。チームを超えた相互評価制度により、他のチームの技術や進め方、ビジネスを理解し、その評価者が自分のチームを率いるときにとてもプラスになると思っています。
他のチームを評価する以上、自分のチームもしっかりしなければなりません。結果的に、みんながんばることになるのです。こうした「評価することや評価されることに慣れる文化」はとても重要だと思います。
あとは、評価する側の負担を減らすことです。
評価される側はもちろんですが、評価する側も緊張します。自分の評価が昇格候補者の給料に影響するわけですから、かなりのプレッシャーです。1人では負担が大きいですし、3人では業務に影響が出てしまいます。それで2人で評価するスタイルを継続しています。
評価者はCTO、つまり私に結果を伝えます。最終的な判断は私が引き受け、評価者のプレッシャーを減らすようにしています。
技術力評価会は評価者の能力が高くないと、低い評価しか出ずに破綻してしまう制度だと思います。評価結果の質を担保するためにも、結果をCTOに共有し、内容のすり合わせを行うことが重要です。
評価制度ですから、納得度が最も重要です。そのため、決定プロセスを可視化することが納得度の向上につながると考えています。現在は評価結果をGitHubで社内に公開しています。
私がCTOに就任した最初の年は評価のために、人事の役員と夜な夜な「3~5年後の会社をどうしたらいいのか」「どのくらいの規模になっているのか」「新卒、中途採用の割合」など、文字通り顔を突き合わせて話しました。
一方、近視的な制度だけでうまくいくとは思っていません。3年後に会社が成長しているために、技術力を向上させる必要があり、そのためにはエンジニアが長く働くことが重要であるーー。そのように、物事を深堀りして考えられた、目的を実現させるための技術力評価会であるべきと考えています。
ZDNet:技術力評価会を実施した結果、変わったことは。
小賀氏:エンジニアの数が増え、グレードが高い人が多くなりました。これは企業として評価されていいことだと思います。昇格には実績が加味されますから、評価が甘くなったということではありません。技術評価会の成果が出ていると判断しています。
ZDNet:CTOとして考える「いいエンジニア」は、どのような人でしょう。
小賀氏:技術は移り変わっていくものという認識があるエンジニアです。特に昨今はそのサイクルが速まっているので、今得意な技術に固執するのではなく、どんどん新しいものを取り入れる必要があります。例えば、「適切なバージョン管理」「設計レベルでのコードレビュー」「必要充分なテストの実施」「ワンステップでのデプロイ、ロールバックを可能にする」「ポータビリティを意識する」「キャパシティプラニングをきちんとやる」「サービスレベルに落とし込まれた監視や運用体制を作る」ーー。これらはその点で妥当な技術で当たり前にやっていてほしいですね。
実際にはこれらは簡単ではなく、「”当たり前”がきちんとできることが必要」と常に言っています。われわれはベンチャーですから、改善、チャレンジのサイクルを速くすることがすごく大事です。