前回、伝統的な「ビジネス」と「テクノロジ」だけではなく、ミレニアル世代の直感的な発想が経営者にとって重要になってきているというお話をしました。
デジタルという言葉が非連続的な離散量(とびとびの値しかない量)を意味する事から、デジタルとは非連続的なイノベーションを指し、時代を象徴するミレニアル世代の直感的発想自体が非連続的なイノベーションを生み出す源泉となる。そして、ミレニアル世代の発想を象徴する“直感的に面白く、これまでになかった発想”を生み出す思考ノウハウとして注目されているのがデザイン思考になります。
デザイン思考の基本的な考え方
思考とは、何らかの事象や目標などの対象について考えるプロセス(過程)を指します。頭に何かを思い浮かべる事、つまり五感で受け取ったイメージと、それらを脳内で再構成したイメージを関係関係付け判断に至る作業を言います。
デザインの語源はラテン語designareで、計画を記号に表すという意味だそうです。
デザインの意味は問題を解決するために思考やイメージなどさまざまな要素をブロックのように組み立て、表現すること。いまひとつイメージがつかなかったので、グラフィック・デザイナーの友人にグラッフィクを創造するときの要素を聞いてみたところ、それはお互いに交わらず干渉し合うもので、具体的には、線、形、色、明暗、質感、立体感、配置、余白、比重であると教えてくれました。なるほど、ある作品を作るために、それらの構成要素を組み合わせるわけですね。
デザイン思考の元祖
つまりデザイン思考とは、ある問題解決のためにさまざまな情報を五感で受け取ったイメージと、それらを脳内で再構成し、意味のあるように組み合わせるためのプロセスと定義できます。アート的な要素が強いように感じますが、実は適応範囲が広いのが、この定義からお分かりになると思います。
デザイン思考のコンセプトは、ノーベル経済学受賞者でありAIのパイオニアであるハーバート・サイモンのよる著書『The Sciences of the Artificial』(1969年)の中に、デザイン思考の思想が見られます。その後、建築の視点から建築家Peter Roweが、まんまのタイトル『Design Thinking』を発表しましたが、現在のデザイン思考の様な優れたプロダクトをデザインするための方法論ではなく、業界の問題解決プロセスを解説したものでした。
個人的な見解ですが現在のデザイン思考のパイオニアはIDEOを創立したDavid Kelley。Kelleyは「Wicked Problems in Design Thinking」(1992年)で、デザイン思考とはデザインを通じて人間のうざい課題を扱うものだと言いました。さらに今のデザイン思考を決定付けたのはKelleyの著書『発想する会社』で、IDEOにおけるデザイン思考のデザインプロセスを定義しました。