VMwareとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)が10月30日、パートナーシップを強化すると発表した。NTT Comのクラウドサービス「Enterprise Cloud」とVMware Cloud Foundationなどを組み合わせ、オンプレミスに構築した既存システムと接続できるマルチクラウドサービスを提供する。
NTT Comは、来年1月から、VMwareベースの既存システムをクラウド上へと簡単に展開できる専有型もしくは共有型クラウドサービスを国内外で提供する。協業の背景について、VMwareのクラウドおよびネットワーク担当の最高技術責任者(CTO)、Guido Appenzeller氏に聞いた。
VMwareのクラウドおよびネットワーク担当のCTO、Guido Appenzeller氏
オンプレミスシステムのクラウド化について、VMwareは既に、IBMとAWSとの提携を発表済み。サーバを中心に、ネットワーク、ストレージも含めたオンプレミスシステムをVMwareベースで構築している企業は多く、今後それをクラウドに拡張するニーズが強まってくる。NTT Comとしても、譲れない分野と言える。
Appenzeller氏は「ITはもうバックオフィスの機能ではない」と指摘。タクシー会社の事務用ITとUBERを比較し、UBERにとって「ITがビジネスそのものであることは明らか」と説明した。
協業について両社は、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するとしている。狙いは、オンプレミスの主機能をクラウドへと大規模に載せ替えてもらうというよりも、デジタライゼーションのような新たなニーズに対応するためのアプリケーションを、マルチクラウド環境に実装して、それをオンプレミスと接続するようなケースと言えそうだ。
オンプレでの優位性をクラウドに移す
協業において中核となる製品は、サーバ、ストレージ、ネットワーク機能を担う「VMware Cloud Foundation」や、複数のパブリック/プライベートクラウドをまたがって統合的な運用ツールをクラウドベースで提供する「VMware Cloud Services」(VCS)などだ。
VCSは9月に開催したVMworld 2017で発表したもの。もともと打ち出していたコンセプト「Cross-Cloud Services」を具現化した。Appenzeller氏はVCSの中身から、重要なものとして特に、ハイブリッドクラウドのネットワーク可視化などを担う「Network Insight」、アプリケーションエンドポイントにおける脅威を検出し、対処する「AppDefense」、最新のクラウドネイティブアプリを監視、分析するプラットフォーム「Wavefront by VMware」の3つを挙げる。
オンプレミスとクラウド、マルチクラウド環境など、形態の異なるシステムの乱立が今後増えると予想される中、複雑化する環境を横ぐしして管理、監視する仕組みがますます必要になってくる。そこで「オンプレミスのサービス監視にSaaSを採用するユーザーが増えている」と同氏。マルチクラウドを含めた管理を、オンプレミスを前提に実施するとは考えにくいことの表れとも言える。
インフラの主要な機能――vSphereによるサーバ仮想化、ネットワーク仮想化のNSX、ストレージ仮想化のvSANなど――で高いシェアを持つことは、VMwareの競争優位点となってくる。
IT部門の対応力も問われる
ここに、コンテナサービスの活用などもトピックとして加わると話す同氏。インフラからアプリケーションに至るまで、技術面で従来とは根本的に異なるものへと移り変わる面も多い。
これらの動きに、ユーザー企業がついていけるのかという問題も出てきている。Appenzeller氏は「それは日本だけでなく、米国でも同じ」と語る。ユーザーだけでなく、システム構築を支援するシステムインテグレーターやコンサルティングファームも、複雑化する技術的な動きを的確にとらえ、変革をリードする必要が出てくる。