アドバンテックとオムロン、NEC、日本IBM、日本オラクル、三菱電機は11月6日、エッジコンピューティング向けソフトウェアの普及推進を目的とする「Edgecrossコンソーシアム」を29日に設立すると発表した。ソフトウェアは2018年春のリリースを予定している。
コンソーシアムは、工場などの製造システムとITシステムをつなぐエッジコンピューティング向けの基本ソフトウェア「Edgecross」の仕様策定や開発、マーケティング、販売、対応機器の検証・認定、産学官連携などを行う。設立発表した6社が幹事企業となり、数十社が賛同。今後は研究機関や業界団体などの参加も見込む。
コンソーシアム顧問を務める東京大学名誉教授の木村文彦氏
記者会見でコンソーシアム顧問を務める東京大学名誉教授の木村文彦氏は、設立の趣旨について、政府が推進するIoTなどを活用した製造業の高度化を背景に、生産現場とITシステムが連携するためのエッジコンピューティング領域で、業界の枠を超えたオープンかつ標準的なプラットフォームの実現が求められているためと説明した。
エッジコンピューティングは、一般的にフィールド(現場)に設置されるセンサなどの小型コンピュータとデータセンターを接続し、小型コンピュータから出力されるデータを収集したり、データセンターで必要とするデータのみを抽出するといった処理を行ったりする役割を担う。コンソーシアムが対象とするのは、製造現場のFA(ファクトリオートメーション)システムとクラウドサービスを含むITシステムをつなぐエッジコンピューティングになる。
「Edgecross」の立ち位置
木村氏によれば、製造分野のエッジコンピューティングの普及にとって、メーカーごとに異なるFAシステムやデータの仕様、また、汎用的なITシステムで処理や分析するための手法も複雑なことが障壁になっている。コンソーシアムが開発する「Edgecross」では、メーカー各社が技術やサービスのノウハウを持ち寄ることでFAシステムの差異を吸収できるオープン性を確保し、ITシステムで容易に連携・活用できる仕組みを提供する。
木村氏は、Edgecrossの特徴に(1)リアルタイム診断とフィードバック、(2)生産現場をモデル化、(3)多種多様なアプリケーションをエッジで利用、(4)生産現場のあらゆるデータを収集、(5)FAとITのシームレスな連携、(6)産業用PCで動作――を挙げる。ITシステムと連携するが、Edgecross単体でもデータ処理など一定のアプリケーションを利用できるようにするという。
コンソーシアムに賛同する企業
コンソーシアムでは、まず設立日の11月29日に東京ビッグサイトで開幕する「システムコントロールフェア」に出展し、「Edgecross」への取り組みを製造業界向けに発信するほか、Edgecrossへの対応を予定する製品を紹介する。同時にEdgecrossの仕様策定や製品開発を進め、仕様を会員向けに公開するほか、インターネットのマーケットプレースでも有償販売もしていく(価格未定)計画だ。
幹事企業の担当者らは、IoTを推進するためのエッジコンピューティングの実現に向けて、組織や業界の枠を超えた協調的な取り組みがもはや不可欠との判断から、コンソーシアム設立に至ったと説明。各社は、Edgecrossの開発やEdgecrossを用いたアプリケーションサービスの提供あるいは提供基盤の支援といったそれぞれの役割を果たすとしている。
コンソーシアム設立を発表した6社の代表者と木村氏(写真右)