クラウドコンピューティングへの移行は確実に進んでいるが、多くの企業は、まだその初期段階にある。アナリスト企業QuocircaのサービスディレクターClive Longbottom氏は、オンデマンドITへの移行が転換点を迎えたという主張をうのみにしてはならないと述べている。「すでに時代はクラウドになったと主張する人は多いが、わが社の調査によれば、クラウドファースト企業は企業全体の12%しかない」と同氏は言う。
Quocircaは最近、エンタープライズクラウドを提供している企業Nutanixの依頼を受けて、IT部門の責任者やブレーン400人を対象に調査を実施した。その結果、企業の3分の1は一定のワークロードをクラウドで実行している一方で、4分の1もの企業が、今後オンデマンドサービスに移行することは絶対にないだろうと回答している。
この調査で、主な問題はシステムの統合、総所有コスト、セキュリティであることが明らかになった。
「すでにクラウドへの移行が終わった取り組みの早い企業もあるが、これらはクラウドこそが未来であることを知っている主流の企業だ。同時に、社内で古いテクノロジを利用することに問題を感じていない、取り組みが遅い企業も存在する。しかし、今後は柔軟性と機動性が重要になると考えられ、クラウドを取り入れなければ、事業はいずれ傾いていくだろう」とLongbottm氏は述べている。
では、クラウドはどのように取り込んでいくべきなのだろうか。この記事では3人のITリーダーに聞いた、クラウド導入の経験と、オンデマンドITを推進するために採用しているベストプラクティスについて紹介する。
1.ビジネスケースを検討し、準備ができたときに拡大する
英国のエアシア大学でICT責任者を務めるBrad Johnstone氏は、クラウドには制約があり、あらゆる組織に最適な選択であるとは限らないと考えているITリーダーの1人だ。エアシア大学はオンデマンドITを効果的に利用しているものの、クラウドの適用可能範囲は限られており、特にセキュリティ上の問題が課題だと同氏は述べている。
Johnstone氏は「大学ではキャンパス全体で『Microsoft Office 365』を利用しており、これまでのところ、非常に好ましい結果が出ている。Office 365を使用することで、メンテナンスの必要な要素が少なくて済む。大学ではほかのクラウドアプリも使い始めている。ただし、扱っているデータの性質から、中核的な業務は今後も常に組織内にとどめる予定だ」と述べている。
「判断のために十分な時間を割くべきだ。もし大学の役員が私に、キャンパスで全面的にクラウド技術を使いたいと言ってきたら、彼らとセキュリティとメンテナンスについて議論をすることになるだろう。私の役割は、意思決定者に最善のアドバイスを提供することだ」(Johnstone氏)
「クラウドを取り入れなければ、事業は傾き始めるだろう」
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