日立、患者の再入院リスクをAIで予測--米医療機関と効果検証

藤本和彦 (編集部)

2017-12-12 13:49

 日立製作所は12月12日、心疾患患者の再入院リスクを高い精度で予測する人工知能(AI)技術を開発したと発表した。米医療機関のPartners HealthCareと共同で効果検証に取り組み、従来基準に比べて2倍以上の患者の再入院を防止し、1人当たり年間約80万円(7000ドル)の医療費低減効果があることを確認した。

 米国の病院経営では、医療の質の担保のために30日以内の再入院率が重要な指標の一つとして管理されている。Partners HealthCareは、特に再入院リスクの高い心疾患患者を対象として退院後に脈拍データなどを集め、メールや電話でのケアを提供するプログラムを実施し、再入院率の低減に取り組んできた。

 新開発したAI技術は、深層学習(ディープラーニング)を使って高精度な予測モデルを構築する。入院患者に対して行われた処置や投薬、病歴などの医療情報と、過去の医療判断要素の蓄積である医療ガイドラインの情報を学習することで、退院してから30日後に再入院するリスクを予測する。

再入院リスク予測の活用イメージ
再入院リスク予測の活用イメージ(出典:日立製作所)

 従来の深層学習技術は、利用した情報と予測結果との因果関係を説明することが困難なため、医療分野での活用において課題となっていたという。そこで、日立はディープラーニングの学習結果を解析し、医師が理解でき、医療行為に反映するための判断ができるような数十個の要素のみを抽出して、リスク予測を行う技術を開発。そのリスク予測式から標準的な統計解析手法によって、再入院リスクと判断要素の寄与度を算出することが可能となっている。これにより、高い予測精度と医師が理解できるリスク根拠の説明の両立を実現した。

 予測モデルの構築と効果検証に当たっては、2014~2015年に入退院した心疾患の患者約1万2000人の電子カルテに記載された治療内容や患者の容体などを用いた。予測されたリスクに応じて、退院後ケアプログラムを適用した場合のシミュレーションを行った結果、入院中の医療費が高い順に適用患者を選ぶ従来の基準に比べて、再入院を防げる患者数が最大2倍以上になり、患者1人当たり年間約80万円の再入院コストを削減できる見通しが得られたという。

 今後、日立とPartners HealthCareは、これから入退院する患者に対する効果検証や、医療従事者による評価を進め、実際の医療現場への提供を目指していく。

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