妊娠・出産後の離職がほぼゼロに--ネットワンが自前で取り組む“働き方改革”

藤本和彦 (編集部)

2017-12-29 07:00

 ネットワンシステムズは、“働き方改革”の一環で2011年からテレワークとフレックスタイム制を導入している。リモートワークなどを可能にする各種ツールを組み合わせることで、どこでも簡単かつ安全に業務が進められる“仮想オフィス”環境を構築した。自社で実践したノウハウを本業のICTソリューションの販売に生かしている。

働き方改革に必要な要素とは

 同社の取り組みは2010年ごろにまでさかのぼる。「働き方改革」を経営戦略に位置付け、(1)人事制度、(2)情報通信技術(ICT)ツール、(3)企業文化の改革――の3点を通じて、場所を選ばずに働ける環境の構築をトップダウンで目指した。

 在宅勤務制度の導入を検討する際には、「従業員一人ひとりの時間の使い方を把握することが難しい」「人事評価が正しく行えるか」「従業員間のコミュニケーションがおろそかにならないか」といった不安を抱く企業も多い。同社はこれらを経営課題としてとらえ、その解決のために、人事評価制度の見直しを進め、労働時間での評価ではなく成果に応じた評価へと転換を図っている。

 時間思考から成果思考へと労働意識を変化させることで、「会社に行くことが仕事」という考え方から「必要に応じて会社に行く」という考え方へとシフトした。テレワーク制度は全社員が対象で利用回数の制限も設けていない。オフィスは労働場所の一つとして、従業員が自律的に考えて最も生産性が高まる場所を選んで業務を進めていけるようにした。

ICTツールの掛け合わせで“仮想オフィス”を構築

 同社で取り扱いのあるさまざまなICTツールを掛け合わせることで、社外や在宅でもオフィスと同等の環境を利用できるようにしている。具体的には、仮想デスクトップ(VDI)に「VMware Horizon」、プレゼンス/チャット/画面共有に「Cisco Jabber」、ビデオ会議/ウェブ会議に「Cisco TelePresence」「Cisco WebEx」、スマートフォン活用に「WMware AirWatch」「Box」「Office 365」を活用する。

 2013年5月には本社を移転・リニューアルした。フリーアドレス制を採り入れたことで、執務エリアの座席数を削減。空いたスペースを有効活用して、カフェテリアやビデオ会議ブースを増やした。社内ネットワークに無線LANを導入し、全社員約2300人のPCをBYOD(個人端末の業務利用)に移行した。仮想デスクトップ環境にしていることで端末に業務データが残らないようにしている。

 働き方改革を成功に導くためには、社内の意識改革や動機付けが重要になる。ネットワンシステムズでは、新たな人事制度とICTツールの活用を促進させるため、「テレワーク活用ガイドの策定」「社内説明会・管理職研修」「全社員向けの年次アンケート」といった各種施策を継続的に実施している。

 働き方改革の成果は確実に表れている。働き方改革に取り組み始めた2012年度と、直近の状況をまとめた2016年度で比較した場合、一人当たりの法定時間外労働が約60%減少(21.7時間→8.8時間)した。また、月40時間以上の残業社員の比率も約60%減少(15%→6%)した。

 その一方で、在宅勤務をする従業員の比率が42%から59%に上昇し、ワークライフバランス実現度が47%から55%に上昇した。育児・介護などの事情を抱える従業員が継続して安心して働くことが可能になり、妊娠・出産に伴う離職がほぼゼロになったという。

自社実践のノウハウを本業に活用

 働き方改革の自社実践で得たノウハウは、本業であるICTソリューションの販売に生かされている。その最大のアピールポイントが、新本社に設置した「Innovative Office 見学エリア」だ。来客者は従業員がウェブ会議やビデオ対話、メール、チャットなどを活用しながら、業務に携わっている様子を見学することができる。

 また、経営層から総務、経理、人事、営業、IT部門など社内のあらゆる部門が働き方改革を体験することで、成功談や失敗談といった各部門の生の声を顧客に伝えられるようになったとしている。

 こうした取り組みが評価され、2017年11月には、総務省が選定する「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞した。テレワーク先駆者百選とは、総務省が2015年に創設したもので、テレワークの普及促進を目的として同制度の導入・活用を進めている企業・団体などを選出している。

Innovative Officeの見学エリア

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