Dolphin Enterprise Solutions Corp.のCEO兼アーカイビング担当プリンシパルであるWerner Hopf博士はこの問題について悲観的な考察を行っている。Hopf氏の見解は、「欧州連合(EU)が定めたGDPRの施行日である5月25日が近づくにつれて、対応へのプレッシャーが顕在化し、切迫してくるだろう。GDPRの影響は米国内でも目立つようになり、企業は多額の罰金や監査法人からの圧力を避けるために、蓄積してきた大量のデータの整理に素早く対応する必要に迫られる。それができなければ、深刻な事態に陥る可能性がある」というものだ。
GDPRに関しては、楽観的な見方はない。Sumo Logicのセキュリティおよびコンプライアンス担当バイスプレジデントGeorge Gerchow氏は、さらに強い表現を使って、「GDPRの規制は、大手テクノロジ企業を簡単に狙い撃ちできる標的に変える」と述べている。同氏はさらに、「5月25日にGDPRが施行されれば、UberやGoogle、Appleなどの大手テクノロジ企業の監査が槍玉に挙げられるまでに長くはかからないだろう」とも付け加えている。またGerchow氏は、狙われるのは大手テクノロジ企業だけでなく、「金融機関や旅行会社が次の標的になる。これは、この種の企業はグローバル化が進んでおり、情報が地理的国境を越えて自由に流れているためだ」と予想する。
IoTやAI、機械学習、コンテナ、マルチクラウドの導入などに関する壮大な予想は、すべて自由な情報の流れに依存しており、規制違反やそれに伴う金銭的なペナルティを恐れてデータを移動させることに抵抗が起これば、実現を妨げられてしまう。
SASの製品管理担当ディレクターRon Agresta氏も同様の考えを持っており、「オンプレミスからクラウド上に移されるデータが増え、政府による規制や業界ルール(特に個人情報の利用に関するもの)が浸透するに従って、ガバナンスが大きな課題になる」と述べている。
明るい面を挙げれば、Hitachi VantaraのグローバルCTO Hu Yoshida氏は、GDPRやその他の新たな規制を受けて、新しいデータガバナンスフレームワークが登場すると予想している。SASのAgresta氏も、イノベーションと問題を防ぐ措置の間に妥協が必要だと考えており、企業には「データを中心とした問題を解決するために、『攻撃的アプローチ』(データを機動的かつ探索的に扱う能力)と『守備的アプローチ』(データのガバナンスとコントロール)の適切なバランス」が求められるようになると述べている。
KineticaのNegahban氏は、AIにはモデルが誤っていたり、偏っている可能性があり、同様のバランス感覚で扱われるべきだと考えている。同氏は、AIフレームワークが生成するすべての入力やスコアを監視・追跡することで、人命に影響を及ぼすようなAIの誤判断をを引き起こす可能性のある、人間が書いたコードの発見が容易になると述べている。
感情のジェットコースター
これらの予想はさまざまな感情を掻き立てる。この記事では、まず強い高揚感を引き起こす楽観的な予想を紹介し、続いて読者を悲観論に導く反対の見方を紹介したあと、思慮深いバランスの取れたアプローチが必要だという議論で最後を締めくくった。
これらの議論は、新たな年を迎えるにあたっての建設的なトレーニングになったはずだ。ビッグデータアナリティクスのスタックは安定し、本番環境に導入されつつあるところで、最近では非常に高い水準の業績やROIを求められるようになっている。リスク評価や危機管理計画によって、Hadoopで起こったような不幸な出来事や落とし穴を避けることができれば、IoTやAI、機械学習は真価を発揮してくれるだろう。
うまくいくチャンスはある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。