AI活用に対応する次世代データセンター--データドッグが新潟・長岡に開設 - 17/21

國谷武史 (編集部)

2018-01-24 06:00

 データドックが新潟県長岡市で建設を進めてきた「新潟・長岡データセンター」が竣工し、1月22日に開所式が行われた。同センターは、GPUやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)などの高い処理能力に対応するインフラを提供しながらも、豪雪地帯ならでは特徴を生かしてPUE(電力使用効率)値1.19という省エネ性を実現している。


データドッグが建設した「新潟・長岡データセンター」

データドッグ 代表取締役社長の宇佐美浩一氏

 同社は、デジタルマーケティングのメディックス(東京都中央区)や新潟県内のIT関連企業などの出資で2016年4月に設立され、データセンター事業を手掛ける。「新潟・長岡データセンター」は、ビッグデータ活用を支えるITインフラの提供を目的に構築され、「10~20年後も競争力のある拠点を目指した」(代表取締役社長の宇佐美浩一氏)という。

 開所式には、同社関係者や取引先企業のほか、新潟県や長岡市の関係者、県内外のメディアも多数出席。大規模なITリソースを提供可能な設備、地域の気候を生かした省エネ性、IT関連の教育機関やベンチャー企業などが多く集まる長岡市の地域振興という同センターの3つの特色に、地元の期待は大きいようだ。

次世代データセンターに適した立地

 国内データセンターの多くは、障害や災害など万一の際に、システム担当者がすぐに駆け付けることのできる東京や大阪などの都市部に集中する。宇佐美氏によれば、新たなデータセンターサービスの提供に向けて、現状の都市型データセンターではファシリティ面などから難しい大規模化、省エネ性、地方創生という3つの目的に適する立地を複数の候補地から検討した。

 長岡市を選定した理由は、東京から上越新幹線を利用して2時間ほどで直接アクセスできる利便性に加え、冬場の積雪を夏場の機器冷却に活用可能な気候や、3つの大学と高等専門学校、ITベンチャーが集まる長岡市の産業立地にあったという。

 今回は第1期の竣工となり、敷地面積は9185平方メートル。建物は地上2階で500ラックを収容可能だ。同社では2020年までに第2期工事を終える計画で、全体では敷地面積2万1063平方メートル、1500ラックを収容できる規模を予定する。

 同センターは、1ラック当たりの最大給電能力が30kVA、床耐荷重も1平方メートル当たり3トンと、国内データセンターではトップクラスとなる。これは、ディープラーニング処理やHPCなどに利用される機器の消費電力や重量に耐えるためで、同社ではサーバラックを特注で製作し、ユーザーニーズに応じて柔軟に機器構成が組める。またネットワークは、複数キャリアによる100Gbpsのバックボーンで都内と結んでいる。

 省エネではPUE値1.19という高い環境性を実現した。同社は富士電機と共同で、雪氷と外気で冷却するハイブリッド空調システムを採用。長岡市は年間平均気温が12.9度で、10月~翌年6月までは外気冷房のみで機器を冷却する。7月~9月は気温が34度を超えると、冬場に蓄えた雪で外気を冷やし、この冷気でも機器を冷却できるようにしている。


冬場に貯めた雪を夏場の機器冷却に活用する

 サーバの冷却は、ラックの前面から冷気を送り、背面から暖気を排出するホットアイル/コールドアイルの仕組みだが、空調機から送り出した冷気をサーバルームの壁面に設けた「共通ダクトチャンバー」という場所でいったん混合させ、特に温度の高いラックを効率良く集中的に冷却する国内初という仕組みを導入した。

 データセンターの所在地は、2004年の中越地震でもほとんど被害が発生しなかったという強固な地盤上にあり、安全性や信頼性にも優れる。地盤はN値60以上(データセンターの設置基準はN値50以上)の信濃川の固い砂礫層で、都内のように地下深くに基礎杭を打つ必要がなく、直接基礎で建設。地震対策では、3種類の積層ゴム(ブリヂストン製)による免震装置を48カ所、オイルダンパーを4カ所に設置する。

 電力は東北電力から2系統で6.6kVAで受電。停電時には、無停電電源装置(UPS)とN+1構成のガスタービン発電機で72時間の自家発電による継続稼働を可能にしている。ファシリティ面でも日本データセンター協会(JDCC)が策定する基準のティア4に適合している

ビッグデータ活用とデータセンターの課題に対処

 データドックは、新潟・長岡データセンターから提供するサービスについて、まずハウジングやホスティングなどの一般的なメニューから始めているが、今後は消費電力の高いシステムへの対応や、GPUサーバのホスティング、映像解析・最適化といったデータマネジメントサービスを予定する。

 上述のように、都市部にある既設のデータセンターの多くは、設備の制約から高い処理能力を必要とする機器の収納が難しくなっており、データセンターの新設にも高い地価など多額のコストを伴う。宇佐美氏は、今後老朽化していく都市部のデータセンターユーザーによるリプレースやビッグデータ活用の新たなシステム、事業継続や災害対策などのニーズに対応したい考えだという。


高性能コンピューティングへの対応に加えて、データセンターによる地方創生にも取り組む

 特にビッグデータ活用の領域では、例えば、4K/8Kのような超高精細映像データからディープラーニング技術を用いて視聴者の関心が高い内容を瞬時に抽出し、編集から番組作成、配信までが可能になるとして、地元の企業や学術機関と連携した取り組みを計画。この他に、データセンターの排熱を利用した水耕栽培や水産養殖も検討している。

 下記のフォトレポートで「新潟・長岡データセンター」の設備や開所式のもようを紹介する。

サーバルームの隣にある空調機器群。増設スペースもある

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