本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、コンカーの三村真宗 代表取締役社長と、パロアルトネットワークスの藤生昌也 セールスマネージャーの発言を紹介する。
「SAP ConcurになってもSAP以外のシステムとの接続性は従来通り保持していく」
(コンカー 三村真宗 代表取締役社長)
コンカーの三村真宗 代表取締役社長
出張・経費管理クラウドサービスを提供するコンカーが先頃、2018年の事業戦略について、東京・銀座のGINZA SIX内に設けた新本社オフィスで記者説明会を開いた。三村氏の冒頭の発言はその会見で、3月1日にソリューションブランドをSAPと統合して「SAP Concur」にしたことを受けて、SAP以外のシステムとの接続性について聞いた筆者の質問に答えたものである。
SAPが買収したコンカーの米国本社との事業統合は2014年12月に完了しているが、日本法人はコンカーとして継続しており、3月1日にグローバルでの統一ソリューションブランドであるSAP Concurを前面に押し出す形にした。
グローバルなSAP Concurは2017年の売上高が10億ドルを超え、導入企業数はおよそ4万社を数え、出張・経費管理クラウドサービス市場で6割近いシェアを獲得しているという。日本では導入企業数が710社(2017年12月時点)、シェアは4割余りとグローバルの実績を追いかけている状況だが、2017年の売上高の前年比伸び率はグローバルの22%増に対し、74%増と急成長を遂げつつある。
三村氏は2017年に急成長した要因として、「領収書電子化の規制緩和」「働き方改革の具体策」「新製品の立ち上がり」「中堅中小市場への本格参入」の4つを挙げた。
また、2018年の事業戦略としては、図に示したように4つの軸で成長戦略を推進することを明らかにした。コア事業では経費管理「Expence」を大手企業に直販して新規契約を獲得。ソリューションでは出張管理「Travel」や請求管理「Invoice」、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスに注力。顧客セグメントでは中堅中小企業にフォーカスし、チャネルでは従来のパートナーに加えSAPルートにも広げていきたい考えだ。
図:コンカーが4象限で示した2018年の事業戦略
SAPとの連携については、企業に対してコンカーが経理などのユーザー部門、SAPはIT部門との関係が深いので、「側面から支援してもらう形になる」(三村氏)という。
そして、会見の質疑応答で筆者は、「SAP Concurになると、SAP以外のシステムとの接続性を不安視するユーザーが出てくるのではないか」と聞いてみた。その答えが冒頭の発言である。さらに「私どものサービスの使い勝手におけるニュートラルな立ち位置は、これまと全く変わらない」と強調していた。
企業にとって出張・経費管理のコストは、実は人件費に次いで大きく、IT化によって効率化できる余地は大いにある。その意味では、SAP ConcurにSAPの今後の戦略を見ることもできそうだ。注目しておきたい。