松岡功の一言もの申す

日立が「コンピュータメーカー」の旗を降ろす背景 - (page 2)

松岡功

2018-04-05 10:30

産業史上も時代の変わり目を象徴する出来事に

 この話を受けて、筆者の頭に浮かんだのは、IDC Japanが先頃発表した2017年の国内サーバ市場動向の内容だ。それによると、出荷額の伸び率は前年比4.5%増で、出荷台数は同0.6%減と、要は前年とフラットだった。

 その中で注目されたのが、クラウドサービスベンダーを主な出荷先とする「ODM Direct」の存在だ。この出荷額は前年比45.1%増で全体の1割程度を占め、出荷台数も同33.7%増で、3位のHPEに次ぐ規模になった。ODM Directは数年前から注目されてきたが、この高い伸び率からすると、数年後にはサーバの最大勢力にもなり得る。その生産を支えているのがEMSである。

 そう考えると、今回の日立とUMCエレクトロニクスによる協業と、ODM Directの拡大は同根の動きといえよう。

 それにしても、10年前ならメディアも「日立、コンピュータ生産から撤退」などと書き立てただろうが、今回の発表後の反応は今のところ静かだ。もはや、時代の流れとして当然と受け止められたようだ。日立の動きとしても、2016年にIT関連製品の生産体制を再編した流れの延長線上に予測されていたところがあったのかもしれない。いずれにしても事業そのものから撤退したわけではないので、むしろ日立の事業競争力の強化に向けた姿勢を評価する声もある。

 ただ、これまでコンピュータ産業の歴史を見て少しばかり長く取材してきた身としては、日立がコンピュータメーカーの旗を降ろす格好になったのは、なんとも隔世の感がある。この動きも時代の変わり目を象徴する出来事として、書きとめておきたい。

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