ガートナー ジャパンは、日本企業のモノのインターネット(IoT)推進に関する調査結果を発表した。これによると、IoTの推進体制を確立している企業の中で、テクノロジ人材が不足していると回答した割合は7割近くに達した。
※2テクノロジ人材が不足していると感じるか(出典:ガートナー/調査:2018年2月)
この調査は、全国の従業員数500人以上の企業を対象に実施された。回答者はITインフラストラクチャに関わるマネジャーで、アンケートを通して、日本におけるさまざまなITのニーズや課題を分析している。有効回答数は515件。
テクノロジ人材の不足については、全回答者では5割程度が「不足を感じている」と答えているが、IoTを推進する意向のある企業に絞ると68.9%に達した。まずは要員を確保し、経験を積んでから前進しようと考えるものの、人材を十分に集められず、取り組むこと自体にためらう企業の現状が、今回の調査結果には映し出されている。
また、自社のIoT推進体制に関して、慣習やルールを刷新する決断力が足りないと感じているかという質問では、「そう思う」と回答した企業は調査対象全体の57.7%に上った。さらにIoTの推進体制を確立済みである企業に絞って回答を集計すると、その割合はさらに高くなり、80.3%の企業が決断力の不足を感じていることが分かった。ガートナーでは、IoTの推進では、ビジネススキームの変革が必要で、既存のルールや慣習を見直す決断が伴うと指摘する。そうした選択は、自社内にとどまらず、顧客やパートナーにも影響を及ぼすため、経営者の強い決断力が求められる。
慣習やルールを刷新する決断力が足りないと感じているか(出典:ガートナー/調査:2018年2月)
IoT関連のテクノロジへの取り組みについては、実際に検証を始めているテクノロジの上位3つに、「デバイスの内部あるいは環境を把握するセンシング・テクノロジ」「プライバシーを保護するテクノロジ」「デバイスをコントロールする制御テクノロジ」が挙げられた。
一方、関心はあるものの、テクノロジの成熟度が十分でない、テクノロジを理解している人材がいないといった理由から手を付けられていないという回答が、実際に検証を始めている企業の約2倍、もしくはそれ以上に及んでいることも分かった。
IoTに関わるテクノロジへの関心と取り組み状況(出典:ガートナー/調査:2018年2月)
ガートナーでは、今回の調査結果は、変革を進めようとするものの準備や環境が思うように整わず、IoT推進の理想と現実のギャップに苦慮する日本企業の姿が現れているとした。そしてIoTの推進体制を確立した企業ほど、決断力やテクノロジ人材の不足を痛感していることが明らかになったとしている。
また、IoTの取り組みでは、必要となるテクノロジを、自社あるいはこれまで付き合ってきたベンダーが全てを提供できないことが多く、さまざまなテクノロジに関心を持ちながらも、テクノロジ自体の成熟度や自社のケイパビリティ不足が問題となり、手を付けられないと回答した企業が目立ったとした。