ガートナージャパンは10月28日、デジタルビジネスがIT業界にもたらすインパクトは劇的であるとの見解を発表した。それによると、2015年の世界のIT支出は2014年から3.9%増の3兆9000億ドルを超え、この支出の大部分がデジタル産業経済に向けたトレンドによるものになるという。
2013年以降、新たにオンライン化された物理的なモノの数は6億5000万に上った。3Dプリンタは10億ドル規模の市場に成長し、自動車の10%はオンラインでつながり(コネクテッド)、CDO(最高データ責任者:Chief Data Officer、最高デジタル責任者:Chief Digital Officerの合計)の人数は倍増した。さらに同社では、2015年にはこれら全てがまた倍増するだろうとしている。
IT支出に関しては、ITの需要とコントロールがIT部門から離れ、デジタル化に取り組む顧客に近いビジネス部門へと、劇的にシフトしているという。そしてITベンダーの営業担当者の半数が、IT部門ではなくビジネス部門へ直接、積極的に営業活動を展開すると予測している。
一方、IT部門は自らが何を提供できるのかという部分と、企業が本当に何を必要としているのかという部分の間に存在するギャップ(デジタル・デバイド)を埋める「2つの流儀」を持つ組織へ向かっていくという。1つは従来型の流儀で、信頼性が高く、予測可能で、安全なシステムを求める考え方(質の高いIT部門)。もう1つの流儀は、突発的な事象がいつ発生するか分からない不連続な状態を前提に、アジリティ(俊敏性)とスピードに重点を置く考え方(スタートアップ企業と同じ)。
また、デジタルビジネスが与える影響は、個々の職業によって異なってくる。2018年までに、デジタルビジネスで必要なビジネスプロセスワーカーの数は半減する一方、2018年までにデジタルビジネスによって、デジタル化に向けた仕事は500%増加するとした。
デジタルビジネスで最も必要となるスキルとして挙げられているのは以下の通り。
現在、CIOが採用もしくはアウトソースを検討すべき、最も必要とされるスキル
- モバイル
- ユーザーエクスペリエンス
- データサイエンス
3年後の時点で最も必要となるスキル
- スマートマシン (IoTを含む)
- ロボティクス
- オートメーテッド・ジャッジメント
- 倫理
今後7年の間に急成長する、デジタル環境で新たに専門化された仕事
- インテグレーションスペシャリスト
- デジタルビジネスアーキテクト
- 法令アナリスト
- リスクプロフェッショナル
ガートナーのシニアバイスプレジデントでリサーチ部門の最高責任者であるPeter Sondergaard氏は、先に米フロリダ州オーランドで開催された『Gartner Symposium/ITxpo』で以下のように語っている。
「私たちは、2020年のデジタル組織に向けた能力を、今構築しなければなりません。これはデジタルテクノロジがかかわる部門だけではなく、企業組織全体の問題です。デジタルリーダーシップの鍵となるのが、このようなスキルを持った人材です。信頼を構築するとともに、2つの異なる流儀を持つ組織づくりを進める必要があります」