ひとり情シスを分類する7つのタイプ
2017年だけでも日本全国で500人以上のひとり情シス担当者に、セミナーや勉強会、顧客訪問などを通じてお会いしました。しかし、二人として同じ特徴を持った担当者がいるわけではなく、それぞれのスキルセットや雰囲気が異なります。その人の培われた業務経験や得意分野、置かれた環境などが影響するのではないでしょうか。
しかしながら、伝えるべきメッセージやコンテンツを明確にするためにも、ひとり情シスを幾つかのタイプに分類することにしました。
縦軸はITに関与する部門との関係性を示します。横軸はIT経験の豊富さを表します。IT部門やITに関わる部署などでの勤続年数や、IT知識・経験の量に応じてそれぞれのタイプに分かれます。例えば、上に行くほど日常の業務の中でITに関与する時間が長く、下に行くほど、IT以外の仕事に従事することが多いということです。
代表的なカテゴリとして7つのタイプを定義しました。ひとり情シス担当者とチャートを見ながら話をすると、「自分はここかな?この辺かな?」などと、自身のスキルや経験を振り返りながら和気あいあいと会話が弾みます。必ずしも全員がこの型に当てはまるわけではありません。2つのタイプの中間に位置したり、幾つかの要素を併せ持ったりするケースもあります。
ここでは、セミナーなどで比較的多くお会いする「ジュニアひとり情シス」に焦点を当てて説明します。
ジュニアひとり情シスの実態
このタイプは中堅中小企業をはじめ、大企業の地方工場や海外法人などで見かける機会が多いです。設計開発や生産管理、商品企画、営業企画などの担当者が、「PCに詳しい人」という理由で選ばれることがあります。
また、ITの経験があまりなくても、経営層からの信頼が厚く、前任者の退職に伴って業務を引き継ぐパターンもあります。明るい性格で人間関係の築き方が上手い人が多いです。
ゆくゆくは一人前の情シス担当者に成長してほしいという願いが込められていますが、任命された直後は自分のキャリアが今後どうなるのかと不安な気持ちでいっぱいのようです。
前任者の退職に伴ってIT人材を採用することも可能です。しかし、自社事業や企業文化への理解が優先されます。特に、IT部門はさまざまな部門との調整が発生するため、社内の雰囲気や空気感が分かる人材を前提とする経営者が多いです。
このタイプは、多少のIT経験があるという点で一致しています。ただ、前職でのIT経験といっても千差万別です。大規模プログラムの開発を一部担当した人や、ある特定のネットワーク機器の設置だけを経験した人など、一部の業務に携わっていたというケースがよくあります。一般社員よりもITに対する理解はありますが、情報システム全般の知識や経験があるわけではないので、利用部門の質問や要求に即座に応えられる人はごくわずかです。
セミナーや勉強会への参加も積極的です。講師の話を聞き漏らさないようにしっかりメモを取り、懇親会でも進んで質問をして、いろいろな知識を早く吸収しようという強い気持ちを感じます。切実な問題を抱えていることも少なくありません。
「こうした人々を支援できる方法はないのか」という考えがひとり情シスの研究を進める強い動機となりました。その中でも、まずはここで取り上げた「ジュニアひとり情シス」への支援が重要であると感じています。
ジュニアひとり情シスの行動指針として、次の6つが挙げられます。
- まず自分で対応できるIT分野を明確にする
- 任命した上司や経営層とコミュニケーションを密にして業務の優先順位を付ける
- 資産管理に着手して、ユーザー層へのヒアリングを始める
- 必要なスキルは自分で学ぶか、同じ立場の人に相談できるようにする
- 未経験スキルは外部からの支援を受けられるかどうか探る
- 自分の今年度の獲得スキル、資格などを明確にする
新たな知識を吸収しながら新しい仕事に着手するわけですから、チャレンジは続くと思いますが、一歩一歩進んでいくことを期待する次第です。
- 清水博(しみず・ひろし)
- 横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のディレクターを歴任する。
2015年にデルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在従業員100~1000人までの大企業・中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。