本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、新日鉄住金ソリューションズの大城卓 取締役常務執行役員と、グーグルの寳野雄太 Google Cloudカスタマーエンジニアの発言を紹介する。
新日鉄住金ソリューションズの大城卓 取締役常務執行役員
「“クラウドにシステムを合わせる”のではなく“システムにクラウドを合わせる”」
(新日鉄住金ソリューションズ 大城卓 取締役常務執行役員)
新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)が先頃、クラウドを中心とした同社のITインフラ事業戦略について記者説明会を開いた。同社の取締役常務執行役員でITインフラソリューション事業本部長を務める大城氏の冒頭の発言は、その会見で、自社のクラウドサービスへのこだわりを語ったものである。
NSSOLは、まだ「クラウド」という言葉がIT市場で定着していなかった2007年に、オンデマンドでのユーティリティコンピューティング環境を提供する目的でクラウド基盤サービス「absonne(アブソンヌ)」を市場投入。2014年には、マネージドクラウドサービス「absonne Enterprise Cloud Service(ECS)」と、プライベートクラウド構築サービス「absonne Enterprise Cloud Framework(ECF)」として事業の整備を図った。
さらに、2014年11月にはabsonneとAmazon Web Services(AWS)のサービスを連携させたシステム構築および運用サービスを発表。そして今回の会見では、MicrosoftやOracleが提供するパブリッククラウドとの連携や、absonneの基本サービスとしてOpenStackに対応することなども明らかにした。そうした新しい動きもさることながら、筆者が会見の中で最も印象深かったのは、これまで10年以上にわたって磨き上げてきたabsonneへの強いこだわりである。
大城氏はabsonneについて、「クラウドを目指したのではなく、企業のITインフラのあり方とテクノロジの変化から、あるべき姿を追求した。しかも自らの実証実験の環境を持ち、お客さまの声を反映しながら検証を実施してきた。absonneはそうしてできた“ミッションクリティカル環境に最適な運用サービスまで包含したIT基盤”だ」と説明した。
では、absonneはAWSやMicrosoftのパブリッククラウドと、どう違うのか。それを端的に示したのが、それぞれの位置付けを示した図である。absonneは俊敏性や標準指向よりも顧客ニーズに着実に対応することを重視。ここで同氏が語ったのが、冒頭の発言である。
図:absonneとパブリッククラウドの位置付け
それにしても、NSSOLはabsonneに見られるように、なぜ自社のクラウドサービスにこだわるのか。これに対し、大城氏は次のように説明した。
「ミッションクリティカル環境へシステムを提供するIT企業としての責任を果たすため、設計・構築から運用までのITインフラの技術力を担保し、システムをブラックボックス化させたくないからだ」
システムインテグレータの代表格の1社でもあるNSSOLらしい見解だが、改めてクラウドサービスとは何か、を考えさせられる会見でもあった。