「ひとり情シス」の本当のところ

第8回:ひとり情シスの給与格差--“一般職扱い”は適正か?

清水博 (デル) 2018年07月11日 07時00分

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従業者数100人までの企業では

 総務省が発表する「経済センサス‐基礎調査」は、日本国内の全ての事業所と企業を対象に実施される、最も基本的な統計調査の一つです。2014年の調査データによると、日本の企業数は409万8000社。そのうちの98.5%は100人未満の企業です。日本のほとんどの企業が中小企業と言われる理由です。その社数に100人未満の企業で働く雇用者数で割ると、100人未満企業の平均従業員数は10.4人となります。

ひとり情シスのイメージ

 従業員数100人以上の事業規模になると企業環境は大きく変化し、経営を取り巻くいろいろな悩みが発生するといいます。例えば、「100人未満のときは、そもそも専任部門がありませんでした。営業は専務が全責任を負い、経理や総務は常務が管理、採用と人事は社長の専権事項でした」とある経営者は吐露します。専任担当者がいなくても会社は問題なく運営されていたわけです。

従業員数が100人を超えたら

 その会社では、従業員数が100人を超えたところで改正労働基準法への対応が必要になり、労務管理のIT化を決めたそうです。働き方改革や採用強化なども視野に入れ、早々に対応を進めたとのこと。さらに、業務のペーパーレス化や営業部門のモバイル導入など、既存システムも急速に近代化しました。「今風に言えば、モダナイゼーションだ」とその経営者は嬉しそうに語ります。そして、専任の情報システム担当者を置くことが悲願だったと打ち明けました。

 経済センサスの基礎調査では、従業員数100~300人未満規模の企業当たりの平均従業員数は163.6人です。デルの調査では、100~200人未満の企業規模で1人あるいは複数のIT要員を抱えている企業は76.5%となります。この企業規模になると、情シス担当だけでなく、経理や人事にも専任者を置くことが多いでしょう。

100人超の企業で初めてのひとり情シス

 IT要員を抱えている76.5%の企業のうち、ひとり情シスが占める割合は29.4%です。ひとり情シスはやりがいがありますが、その分、苦労も多いです。ITに関することなら何でもできる、と思われるケースが散見されます。ひとり情シスのあるあるネタも、この頃のものが圧倒的に多いです。

 例えば、個人のスマートフォンや自宅のPCについて相談されるとか、業務PCの性能不足で罵声を浴びせられるなど、理不尽な要求をされることがあります。社内のあちらこちらから呼び出され、せっせと作業をしている様子を見たことがあるのではないでしょうか。初めて設置された情シス担当者への接し方が分からないとこういうことが起きるようです。

キャプション
従業員数100~300人未満企業の情シス人員数

 この企業規模の情シス担当者は、専門学校を卒業したばかりの若い人が多いように感じます。PCやインターネットに詳しく、会社には今まで存在しないタイプです。現在は、ITベンダー/プロバイダーから中堅企業(ユーザー企業)に人材が移動していますが、もう少し規模の大きい企業への転職が多いです。IT人材の発掘が難しい状況では、社員の家族や親戚、知人などを頼って採用することが多いのが実情です。

ひとり情シスの給与格差

 調査結果では、情シス担当者と一般社員で給与に違いがあることが分かりました。「総合職」と「一般職」を分けて採用する企業があります。厚生労働省の調査データによると、従業員数5000人以上の企業の51%で、この人事制度が導入されています。一方、従業員数100~300人未満の企業では23%に落ちます。

 一般職は総合職を補助するポジションとして「事務職」とも呼ばれます。現在はライフプランもさまざまであることから、個人の価値観に合わせて選べるという良い面もあります。しかし、給与面では歴然とした差があることが判明しました。ひとり情シスも一般職として扱われるケースが多いようで、一般社員と比べて9~17%ほどの給与格差があるようです。

 ITには専門知識や特殊能力が求められます。しかも、IT人材は世界的に渇望されています。「失ってから初めて偉大さに気が付いた」という話もよく聞きます。同業他社や業界平均などと見比べてみて、もしそこにギャップがあるようなら、給与水準の適正化を進めてほしいところです。

 ひとり情シスはこのままずっと低賃金のままなのかというとそうではありません。ある従業員規模を超えると、その状況が逆転することがデータで分かりました。これについては、また改めて説明します。

清水博(しみず・ひろし)
清水博氏
横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のディレクターを歴任する。

2015年にデルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在従業員100~1000人までの大企業・中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。

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