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エンタープライズAIの隆盛

デジタルツインの考え方で業務を見直しAIを迎え入れよう

中西崇文 (武蔵野大学准教授)

2018-07-25 07:00

 人工知能(AI)は、われわれの働き方を変え、ビジネスの形を変え、新たな価値を生み出し続けるパートナーになることは間違いない。これは我々が迎えるべくした進化の過程だと言っても過言ではない。AIを業務に心地よく迎えるための一つの大事なキーワードがデータ化である。あらゆる業務をマシンリーダブルなデータに変換して、もしくは介して完了することである。

 しかしながら、業務にはまだまだデータ化されていない紙が回り続ける−−紙の方が見やすいし、確実に現実世界に手元に取っておくことができると。われわれは現実世界の業務の中でも散在する紙を含めたレガシーメディアをそう簡単に捨て去ることはできないはずだ。レガシーメディアを捨て去ることではなくデジタルツインの考え方を業務に入れ込むことがAIを迎え入れる最短ルートだ。

それでも紙が巡る

 ある日、私は出張を行くためのりん議書を作らないといけなかった。いつものように、指定のExcelのフォームをダウンロードして、そこに必要事項を入力する。名前、所属、出張の行き先、日程、出張する理由、諸々の項目が続く。それを印刷して、その紙に自分の印を押す。それを担当者に提出するーー。

 ここまで読んで、そんな前時代的なことをやっているところはないだろうと思われた方もいらっしゃるかもしれない。至って正常な感覚である。しかしながら、少なくとも筆者は、このような体験をまだしている。

 筆者の身を置く環境は古代なのか。ICTの環境が十分整った組織でも、紙を回覧したい人はまだまだ存在するのである。バカにしてはいけない。紙を使うということは、紙にまだメリットがあるからだ。

 余談であるが、時々、このプロセスには、担当者に電子的に送付するために、押印した紙をスキャナで読み込み担当者に送付するという壮大なギャグのようなプロセスがセットになっていることもある。せっかく入力したデータをそのまま送れればいいものをわざわざ無意味化しているようなものだ。

 紙の歴史は古くおよそ西暦105年に発明されたと言われている。これは知識の創出と伝達の文脈において、人間にとって非常に大きな発明である。

 人間は、知識を伝達するときは言葉を使ったり、文字を書いたりする。言葉を使って伝達するときは、知識を伝える人の前に来て聞く、会話をすることがない限り、知識の伝達が正確に行われない。

 文字を発明することによって、書いてあるものを読めば知識が伝達されるようになった。これは必ずしも、伝達者の前にいる必要がないという意味で、知識の伝達における時間の制約を小さくしたといえよう。また、それまで、壁などに書かれていた文字が、紙に書かれることによって、その知識を何処へでも持ち運べるようになったのだ。そのような意味で、紙の発明は、知識の伝達における空間の制約を小さくしたと言えよう。

紙の知識伝達能力

 これほど長い間、情報・知識伝達に用いられて来た紙には、何にも負けないメリットがある。

 まずは閲覧時のエネルギーコストだ。パソコンで見ようが、スマホ・タブレットで見ようが、何かを閲覧する時には、電源に頼らないとならない。紙はもちろん印刷したりする時にはエネルギーが必要であるが、その印刷されたものを見るときは、特にエネルギーに頼らなくていい。

 だからどこへでも持っていける。スマホ、タブレットのおかげでわれわれは非常に有効なモバイルデバイスを手に入れたが、紙も少ない量であれば、まだまだ究極のモバイルディスプレイと言っていいだろう。

 紙の解像度も見逃せない。紙はかなりの高精細な表現が可能なメディアだ。近年、ディスプレイのスペックが向上したとはいえ、紙の一覧性には勝てない。紙を並べて見渡すことはディスプレイ上でいくつかの文書を並べることよりも簡単で明らかに見やすいのは明らかだ。

 これはわれわれ人間が長い歴史の中で獲得して来た知識伝達のメディアとしての紙のメリットであろう。

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