本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長と、CrowdStrike Japanの河合哲也 ジャパン・カントリー・マネージャーの発言を紹介する。
「入社14年目の私自身が過去の成功体験にとらわれないようにしたい」
(日本マイクロソフト 平野拓也 代表取締役社長)
日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長
日本マイクロソフトが先頃、今後の経営方針について記者会見を開いた。平野氏の冒頭の発言は、その会見で現在注力している社内の企業文化の変革において、自らの取り組み姿勢を述べたものである。
日本マイクロソフトは業績を公表していないが、平野氏によると、2018年度(2018年6月期)の売上高の伸びはグローバルの前年度比14%増を上回り、各事業とも好調に推移したという。
2020年に向けては「日本の社会変革に貢献する」との目標を設定し、さまざまな業種においてのデジタル変革を推進する「インダストリーイノベーション」、働き方改革をさらに推し進める「ワークスタイルイノベーション」、生活シーンにおけるライフスタイルの変革を支援する「ライフスタイルイノベーション」を推進するとしている。
会見の詳細な内容については、既報の「2020年に日本ナンバー1のクラウドベンダーを目指す--マイクロソフトの新経営方針」をご覧いただくとして、ここでは会見の質疑応答で「日本マイクロソフトのビジネス面およびマネジメント面での最大の課題は何か」と聞いた筆者の質問に対する平野氏の回答を記しておこう。
まず、ビジネス面では「お客さまのIT部門とITの話だけをするのではなく、IT部門に加えて現場の事業部門の方々と、どのようなビジネスモデルを創っていくか、という話ができる人材をもっと増やしていきたい」とのこと。この背景には、デジタル変革についてはユーザー企業の現場の事業部門と会話する機会が増えてきていることがあるという。
一方、マネジメント面での課題として挙げたのは、現在同社が注力している社内の企業文化の変革だ。具体的には、「リスクを取ってチャレンジする、チャレンジした結果、失敗を責めるのではなく、そこから学ぶ」という企業文化である「Growth mindset」(成長マインドセット)の考え方を社内に浸透させる取り組みである。
図:日本マイクロソフトが取り組む企業文化の変革
平野氏はその考え方について、「これまでの成功体験にとらわれず、新しいことを取り入れ続ける姿勢が重要」とも強調。具体的な活動として、社内でさまざまなプロジェクトやトレーニングを実施しているという。この言葉に続けて、自身の姿勢も重ねて述べたのが、冒頭の発言である。
日本マイクロソフトの経営の舵取りが2019年度(2019年6月期)で4年目に入る平野氏だが、経営方針の会見で企業文化の変革について語ったのは、今回が初めてだ。それだけ思い入れがあるということだろう。これから折りに触れて、その進ちょくを聞いてみたい。