本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、AWSジャパンの長崎忠雄 代表取締役社長と、ガートナージャパンの片山博之リサーチディレクターの発言を紹介する。
「クラウド技術のスキルを持つ人材が今、最も求められている」
(AWSジャパン 長崎忠雄 代表取締役社長)
AWSジャパンの長崎忠雄 代表取締役社長
アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)が先頃、IT人材育成のための学習支援プログラムについて記者説明会を開いた。長崎氏の冒頭の発言はその会見で、IT人材の中でもクラウド技術のスキルへのニーズが最も高いことを強調したものである。
長崎氏によると、「国内のIT人材は2030年までに約60万人が不足するとの試算もある中、IT人材が保持するスキルとして今、最も需要が高いのはクラウド技術だ」という。この点については、グローバル市場が対象ではあるが、LinkedInの調査で証明されている。また、それに伴って、クラウド技術の中でもAWSに関わる技術の資格保持者は、年収においてもIT人材のトップレベルだとしている。
AWSジャパンが今回の発表で提供を開始した学習支援プログラムは「AWS academy」。これは高等教育機関向けに設計されたAWSクラウドのカリキュラムで、「次世代のITプロフェッショナルと未来の仕事を結ぶのが目的」(長崎氏)としている。
具体的には、AWSクラウドの使い方やサービス内容、料金体系などが授業のカリキュラムに組み込まれており、教員と学生の両方に適用する。教員はカリキュラムを受講して講師としての認定を受ければ、学生に対して授業を実施できる。学生はその授業を受けることによってクラウド関連の知識を身につけられ、最終的にはAWS認定の資格試験の合格を目指す、といった格好だ。(図参照)
図:AWS academyの概要
このAWS academyは、授業でAWSクラウドを学ぶプログラムとして、まずは2019年4月から、麻生情報ビジネス専門学校の福岡校と、船橋情報ビジネス専門学校の2校で開講する予定だ。
さらに長崎氏は、既に実績を上げている学習支援プログラムとして「AWS educate」を紹介。これは、「14歳以上の学生に、次世代のITとクラウドのプロフェッショナルに向けた学習の機会をオンラインで提供する」(長崎氏)ものだという。
AWS educateにおけるキャリアパスとしては、「分析とビッグデータ」「クラウドアーキテクチャ」「オペレーション/サポートエンジニアリング」「ソフトウェア開発エンジニア」といった4つから選択できるようになっている。
それにしても、長崎氏がこうした個別事業の会見で説明役を担うのは、最近では珍しいことである。裏を返せば、まだ教育市場向けの社内組織が整備できていないのかもしれない。そうだとしたら、それもまたAWSの成長の勢いぶりを示したエピソードといえそうだ。