クラウドファースト戦略に自信を深める最高情報責任者(CIO)が増えている。アナリスト企業Gartnerの予測によると、世界規模で見た場合、パブリッククラウドサービスの市場規模は2018年通年で1864億ドルとなり、2017年の1535億ドルに比べて21.4%増加するという。では、IT部門のリーダーらが可能な限り多くのサービスをオンデマンド化しようとしているのは何故だろうか?本記事では、クラウドの移行を推進している3人のCIOにその理由を解説してもらった。
#1:外部のプロビジョニングによってセキュリティに対する専門性が提供される
電通イージス・ネットワークのCIOであるGideon Kay氏によると、同社は2020年までに完全な「デジタル経済企業」になるという構想を有しているという。同社は、この種のプロビジョニングを要求するクライアントに対して、デジタルなかたちでサービスを創出、提供することを目標に据えている。Kay氏は、クラウドがこのアプローチに重要な役割を果たすことになると述べた。
同氏は「クラウド採用に関する私の戦略は、クラウドをデフォルトに据えるというものだ。どのような機会があるにせよ、またどのようなソフトウェアを調達するにせよ、それらをサービスとして取得できるのだろうか?クラウドベースで利用でき、クラウドで調達できるのだろうか?そうであれば、われわれはそのようなかたちで実行する」と述べた。
「クラウドを使用できない状況や理由は常に出てくるだろう。そういった場合、それを実現するリソースを社内で維持する必要がある。しかしわれわれは既に、どちらかと言えばクラウドを避けるという段階から、クラウドをデフォルトに据える段階への移行を完了している」(Kay氏)
Kay氏によると、クラウドファーストのアプローチはアプリケーションやプラットフォーム、インフラの垣根を越えて採用されているという。同氏は、社外のクラウドパートナーが持つ専門性を活用しないのは根本的に誤っているとし、「AmazonやMicrosoft、Googleが自社のクラウドインフラのためにセキュリティに費やしている金額と同程度の額を出せる企業など他にない」と述べた。
「データのガバナンスに関する懸念があり、自社データをクラウドに移行することを許さないクライアントもいるかもしれない。これこそが、オンデマンド化できないような状況が存在し得る理由だ。しかし、われわれがデフォルトに据える選択肢は、常に可能な限りクラウドを前提にするというものだ。また、そうしたアプローチは、さまざまなプロバイダーを利用するマルチクラウドになる」(Kay氏)
Kay氏は、現在のクラウドがどの状況にも適しているとは考えていないとも語った。同氏によると、現在でも競争が続いており、さまざまなプロバイダーはそれぞれ異なった強みを有しているという。同氏は「あるプロバイダーは、他社よりもものごとを上手に扱っている。このためわれわれは、そういった強みを活用できるようになりたいと考えている」と述べた。
「つまりわれわれは、教条主義に陥ってすべてを単一のプロバイダーに委ねるようなことはしない。われわれはあらゆるプロバイダーを利用しようとしている。SaaSレベルではSalesforceの製品や、『Microsoft Dynamics 365』『Workday』を利用している。IaaSやPaaSレベルでは、『Amazon Web Services』(AWS)や『Microsoft Azure』、Google製品を利用している。これは意図的な戦略なのだ。われわれは、特定のタスクに長じているのはどのプロバイダーなのかについて、一家言持っている」(Kay氏)