エリック松永のデジタルIQ道場

RPAのコモディティ化で揺らぐ企業のデジタルトランスフォーメーション

松永 エリック・匡史

2018-10-25 06:00

逆風に立ち向かうRPA

 1983年に、Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)が発表した新曲『RockIt』のプロモーションビデオ。家の中は奇妙なロボット達で溢れかえり、人間には理解できない動きを繰り返すショッキングな映像は、精神に悪影響を及ぼす可能性があると、一時期放送禁止なるほどでした。ロボットに支配される世界が人間にとって恐怖なのは、当時も今も変わらないようです。

 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というキーワードを耳にするようになったのは2013年くらいからで、驚異的なスピードで市場が拡大しているのを、コンサルの現場で感じてきました。同時期メディアは、「人工知能(AI)は人の仕事を奪うのか」系のネガティブな記事を連発し、本来歓迎すべき新しいテクノロジの可能を、Rock Itのプロモーションビデオのようにマイナスの方向へと導いている逆風にRPAは見事に立ち向かってきたのです。

RPAとは?

 それでは、そこまで話題になり市場を拡大し続けているRPAの正体は一体何なのでしょうか? 一言で言えば、「PCでの単純作業を自動化するシステム」になります。

 ロボットというと、私のようなおじさん世代には「マジンガーZ」や「ロボコン」のような人間を機械化したような姿を想像しますが、RPAはそういう実態ではなく、あくまでソフトウェアを指します。イメージ的には、ExcelのマクロのPC版と考えてください。例えば、RPAというPCマクロがアプリケーションAを立ち上げ、ある場所の情報を判断し、アプリケーションBとCを立ち上げ、Aからの情報に該当する数字をアプリケーションCのファイルに追記していく――といった、われわれの日々行っている単純な業務作業や管理業務をテキパキとこなしてくれるのです。

 読者の皆さんが感じているかと思いますが、企業の業務は複雑にシステム化され、しかも継ぎ接ぎだらけのシステムは無駄な作業が多過ぎます。至極シンプルな作業なのに、どのアプリをどこから起動していいか分からない、該当するデータがどこにあるのか分からない、ログインができない、といったことに、どれだけの時間を費やしているでしょうか?

 こういった単純なシステムでの作業が自動化されれば、単純作業だと顕著な人間の入力ミスに関してRPAはロジックで処理するので、(1) 人為的なミスが起きない――RPAは風邪をひかないし休日も有給休暇もいらないし、そもそも睡眠時間が必要ないので、(2) 業務処理の超高速化――が実現できます。

 人件費に関しては、日本では欧米のようにドライに解雇できないので、人件費が単純に下がるとは言いにくいのですが、時間の効率化により、PCの単純作業ではない他の業務に貢献できるので作業者に新たな可能性のチャンスを与え、モチベーションアップにつながります。

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