本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAPのPat Bakey SAP Leonardo & Analyticsプレジデントと、マカフィーの櫻井秀光 セールスエンジニアリング本部長の発言を紹介する。
「企業のイノベーションにはスピードが一段と求められるようになってきた」
(SAP Pat Bakey SAP Leonardo & Analyticsプレジデント)

独SAPのPat Bakey SAP Leonardo & Analyticsプレジデント
SAPジャパンが先頃、自社イベント「SAP Leonardo NOW Tokyo」を開催した。冒頭の発言は、同イベントで基調講演を行ったSAP Leonardo & Analytics事業責任者のPat Bakey(パット・ベイキー)プレジデントが、企業のイノベーションについて語ったものである。
Bakey氏はまず、「SAPは26分野の産業でビジネスを展開しており、その全ての分野における世界中のお客さまとお会いしてご要望をお聞きすることが、私の重要な仕事である。そうした中で、お客さまから強く要望されるのは、テクノロジによってビジネスイノベーションを推進したいということだ」と切り出した。
そして同氏は、イノベーションについて、以前とは異なっている状況を最近強く感じるようになったという。それは何か。スピードだ。「イノベーションは産業においても個々の企業においても、以前から繰り返し行われてきた。しかし、このところのイノベーションは、これまでに経験したことのないスピードで起きている。したがって、企業はイノベーションの内容もさることながら、それを進めるスピードの速さが成功の決め手の一つになることを肝に銘じておく必要がある」と同氏は訴えた。
では、なぜイノベーションのスピードが速くなっているのか。同氏はその要因としてテクノロジを挙げ、次のように説明した。
「まず、大きなインパクトがあったのはモバイルデバイスだ。モバイルデバイスによって世界中の数十億の人々がつながる世界が生まれた。これによって、情報が素早く世界中に伝わるようになり、これまで考えられなかったようなビジネスもどんどん生まれた。さらに、それに続いて、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータアナリティクスなどの先進技術が、イノベーションを加速させる形になっている」
Leonardoは、いわばそうした先進技術を結集したソリューションである。同氏は「一言でいえば、企業のイノベーションを支援するもの。ただし、単なるプロダクトではない。先進技術とともにビジネスモデルやビジネスプロセスなどもノウハウとして活用できるようにしている」と表現した。
図に示したのは、Leonardoによるイノベーションへの取り組みである。ポイントは真ん中のLeonardoを取り巻く3つの取り組み手法である。端的にいえば、「既存システムへの組み込み」「オープンイノベーション」「業種別のスターターキット」といったところだ。
Bakey氏のスピーチは、とにかく「イノベーション」の連呼だった。一言で説明しづらいLeonardoを言い表すのは、やはりこの言葉が最も相応しいということだろう。

図:SAP Leonardoによるイノベーションへの取り組み