米国時間1月8日、IBMの最高経営責任者(CEO)Ginni Rometty氏は、米ラスベガスで開催されている「CES 2019」の基調講演で、人工知能(AI)は人間の仕事を破壊し、新たな仕事を生み出すと語った。しかし、最終的にそのバランスがどうなろうと、「仕事の100%が今とは違うものになる」という。
Rometty氏は基調講演の場で、急成長しているテクノロジ分野の職に就ける米国人労働者を確保できるようにするために、企業が連携して実習制度を設ける仕組みである「Apprenticeship Coalition」をスタートさせると発表した。この取り組みには、IBMと全米家電協会(CTA)のほか、Walmart、Ford、Sprint、トヨタ自動車などを筆頭とする企業パートナーが参加する。
同氏はさらに、「Broad AI」(広いAI)の出現によって起こりそうな変化について語った。「Narrow AI」(狭いAI)は特定の分野で1つのタスクを学習させるのに適したAIであり、汎用AIが人間と同様の処理能力を持つAIだとすれば、Broad AIはその間に位置するもので、複数の分野で多くのタスクを処理する上で優れているという。これは、少ないデータでトレーニングできることを意味している。
Rometty氏は、Broad AIは「今よりもずっと少ないトレーニングデータしか必要とせず、AIを市場に出すまでの時間が短くて済むようになる」と述べた。
また、IBMのAIおよび量子コンピューティング研究の責任者Dario Gil氏は、汎用AIが実現されるまでには数十年かかるが、Broad AIはそこに至るための足がかりになると語った。
Rometty氏によれば、AIが改善されると、現在は収集されないことも多い粒度の細かいデータである「ディープデータ」を有効に利用できるようになるという。例えば、IBMと傘下のThe Weather Companyは、クラウドソースによるセンサデータを利用し、地域の気象予報をグローバルに改善するシステムを発表した。「Weather Channel」アプリが、スマートフォンユーザーから収集したデータの扱いについて議論を呼んでいるが、この新しい予報機能はユーザーからの同意を得た端末からのデータのみを利用するとRometty氏は述べた。
基調講演では米航空会社DeltaのCEOであるEd Bastian氏も壇上に上がった。Deltaではデータを予測的メンテナンスやフライトのキャンセル削減に活用しており、以前はフライトのキャンセルがよく発生していたが、2018年にはキャンセルが起きない日が251日になったとBastian氏は述べた。
またRometty氏は、量子コンピューティングも姿を現し始めていると述べ、IBMの量子コンピューティングシステムを紹介した。同氏は、「これは研究室での実験でも、ただのチップでもない、完全なシステムだ」と述べた。
IBMの量子コンピューティング研究を前進させる共同取り組みである「IBM Q Network」に、エネルギー企業として初めてExxonMobilが参加することも明らかになった。現在、このネットワークには数十の組織が参加している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。