「State of Digital Transformation」(デジタル変革の現状)という調査によって、変化し続ける企業を追跡してきているAltimeterが、調査を開始してから5年目となる2019年、最新の調査結果を発表した。破壊的テクノロジと、それが企業や市場に与える影響が続くなか、コンサルタント企業Prophet傘下の同社は、現代のデジタル変革を形作っている変化やトレンドを捉えようと取り組んできている。
AltimeterのBrian Solis氏がまとめた今回の調査によると、戦略的なデジタル変革は2019年、IT部門の枠を越えて組織全体の競争力に大きな影響を与えるようになるという。

Prophet傘下のAltimeterでプリンシパルアナリストを務めるBrian Solis氏
Solis氏(Twitter:@BrianSolis)はAltimeterでプリンシパルアナリストを務めている。同氏はデジタルアナリスト兼ビジネスストラテジストであるとともに、企業とその顧客の間だけではなく、従業員や主な利害関係者との間を取り持つ新たなメディア戦略やフレームワークを創出するフューチャリストだ。また同氏は、チェンジマネジメントに特に力を入れている。ビジネスのリーダーはチェンジマネジメントにより、新たなメディアソースやシステム、プロセスを手にしたうえで、今日のコネクテッドカスタマーの時代に合致する卓越したインフラを構築するための力を得られるのだ。
Solis氏の調査では、予算の急増や、利害関係者が注視している破壊的テクノロジの増加、所有権の企業幹部への移行と部門の垣根を越えたグループによる管理、顧客エクスペリエンスを重視したデジタル変革投資の継続といった点に着目するとともに、従業員のエクスペリエンスと組織文化も依然として変化や成長、イノべーションに力を与え、加速していくうえで重要性を増していることが記されている。以下は、筆者がSolis氏と話をした際に出てきた、同氏の調査における重要な5つのポイントだ。
デジタル変革の現状:5つのポイント
- デジタル変革を成功に導くには、企業が一丸となって取り組む必要がある。このような取り組みは組織全体を見渡せるリーダーによって推進されるのが望ましく、Altimeterの調査でも前年に続き、最高情報責任者(CIO)がデジタル変革のイニシアティブを担っている、あるいは支援しているという回答が最も多く(28%)、最高経営責任者(CEO)がリーダーシップをとる割合も高くなってきている(23%)。
- 市場のプレッシャーがデジタル変革に向けた最大の原動力となっている。こういった取り組みに着手する主な理由は成長機会の追求(51%)や、競争へと駆り立てるプレッシャーの増大(41%)だ。また、データ漏えい事件が毎日のようにニュースの見出しを飾るなか、 欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)といった、当局による新たな規制によっても企業の変革は後押しされている(38%)。
- デジタル変革においては、従業員のエクスペリエンスや組織文化といった人間に関わる要素が重要だとの認識が高まっている一方、変革におけるほとんどの取り組みでは、顧客とのタッチポイントの近代化(54%)や、インフラの整備(45%)に焦点が当てられ続けている。とは言うものの、多くの企業は顧客理解に向けた詳細な調査を実施しておらず、徹底的な顧客調査に基づく指針を持たずにデジタル変革に投資している企業は41%に及んでいる。
- このようなデジタル変革を率いていく人たちにとって、組織からの支持の獲得が依然として最大の課題となっている。調査対象となった企業は、デジタル変革がいまだに出費ばかりかさむものだと捉えており(28%)、投資収益率(ROI)を裏付けるデータの入手も困難(29%)だとしている。また、文化的な課題も大きく立ちはだかっており、保守的な考え方や改革への抵抗(26%)、法的あるいはコンプライアンス面での懸念(26%)が進展を阻んでいる。
- イノベーションは組織内に根付いてきている。回答者の半数近くは、イノベーション文化の醸成に取り組んでいると回答しており、社内にイノベーションチームを設けることは当たり前になっているとしている。