日立、運用管理ツール最新版「JP1 Version 12」--RPAの統合管理が可能に

藤本和彦 (編集部)

2019-01-22 13:00

 日立製作所は、総合システム管理ソフトウェアの最新版「JP1 Version 12」に発売する。IT環境全体の運用データを一元管理し、目的や立場に合わせて必要な情報と関連付けて可視化できるようになったほか、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)が実行する定型業務などクライアント環境における業務実行を自動化できるようになった。

IT環境全体の運用データを関連付け

 新たに提供するインテリジェント統合管理基盤「JP1/Integrated Management 2(JP1/IM2)」は、オンプレミス環境やマルチクラウド環境、マルチベンダーシステムといった多様なIT環境全体を一元管理し、発生する事象(イベント)のほか、稼働情報や構成情報などの運用データやオープンデータなどを組み合わせてリアルタイムに集約する。収集したデータをエンジニアの知見に基づいて関連付けることも可能。その上で、経営者やIT部門責任者、運用担当者といった立場や目的に応じて画面を設計可能となっている。

JP1/IM2の概要(出典:日立製作所)
JP1/IM2の概要(出典:日立製作所)

 例えば、経営者やIT部門責任者は経営に直結する重要なシステムの稼働状況を把握し、迅速な意思決定や業務プロセス改革に向けた施策検討につなげることができる。一方で、IT部門の運用担当者は、IT環境全体やシステム間のステータスを監視し、障害箇所や影響範囲、対応策などを迅速に判断可能になる。

 また、ジョブ管理基盤「JP1/Automatic Job Management System 3(JP1/AJS3)」を連係してジョブ管理データとの関連性を可視化することで、システム障害によって実行されない後続処理なども把握できるようになる。

 さらに、JP1/IM2で集めた運用データを同社のIT運用向けAI(人工知能)と組み合わせることで、運用状況の分析・判断、業務プロセスの最適化など、IT運用業務の自律化も可能になるとしている。イベントのエスカレーション要否の判断や、障害の予兆検知と推定要因の抽出、レポートのデータ整理とシステム課題の抽出など、人の判断やスキルが必要となる作業を効率化する。

クライアント環境での業務実行を自動化

サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部の事業推進本部で主任技師を務める加藤恵理氏
サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部の事業推進本部で主任技師を務める加藤恵理氏

 基幹業務に加え、バックオフィス業務においても、業務効率化に向けて自動化のニーズが拡大し、RPAの活用が進展している。ただ、業務や部門ごとに複数の製品が利用されていたり、基幹システムとの連係が必要になったりと、RPA製品単体だけでは対応しきれない状況が出てきている。

 JP1 Version 12では、RPAが実行する定型業務などクライアント環境における業務実行の自動化を制御・監視する「JP1/Client Process Automation」を新たに提供する。RPA製品が実行するジョブのスケジュール管理やイベント監視が可能で、コマンドやリカバリといった処理も実行できる。「Automation Anywhere」は動作検証済みとなっているほか、各種RPA製品との連係に必要なテクニカルサービスを用意する。

 また、基幹業務のプロセスを自動化するJP1/AJS3と連係することで、既存システム上で実行する基幹業務に加えて、クライアント環境でRPAが実行する定型業務なども含めて、実行順序や状況を踏まえて統合的に管理することができるようになる。

 「業務のカレンダーに合わせた柔軟なスケジューリングや、部門をまたがった一連の業務プロセスの自動化・進捗管理が可能になる」(加藤氏)

システムの計画停止時間を短縮

 JP1 Version 12の提供に合わせ、JP1/AJS3も機能強化が図られている。業務運用における計画停止の要素には、バックアップ、スケールアップ・ダウン、設定変更などが挙げられる。今回の機能強化では、クラウド環境で運用中であっても、ジョブスケジュールやジョブ定義、AJS3自体の定期的なバックアップが可能になった。ジョブ実行環境のクラウド移行を視野に、まずはクラウド環境でのノンストップ運用を強化した。将来的には、オンプレミスを含む全ての環境と運用で、無停止のバックアップやスケールアップ・ダウン、設定変更に対応する予定だ。

 また、JP1/AJS3の稼働実績データを出力し、Excelや分析ツールなどで容易に可視化できるようになった。これによって、IT管理者はシステムの健全性を分析し、安定した業務運用を継続するための対処をエンジニアに指示することが可能になる。

JP1 Version 12の価格と提供開始時期
JP1 Version 12の価格と提供開始時期

 「NoOpsの実現に向けて、JP1は段階的に進化していく。データ、ツール、サービス、ヒト・プロセスを順次統合し、ヒトの作業からAIに段階的にシフトしていくことで、ヒトはワンステージ上の業務に専念できる世界観を実現する」(加藤氏)

 なお、日立製作所は3月19日に浜松町コンベンションホールでセミナー「JP1フォーラム2019 ~システム運用の一歩先へ~」を開催する。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]