SAPジャパンと三菱地所は2月1日、大企業や新興企業がテクノロジとビジネスのエコシステム創出を目的とした拠点「Inspired.Lab」を東京・大手町に開設した。併せてSAPは、新興企業の支援策「SAP.iO Foundry Tokyo」も発表した。
SAPと三菱地所が東京・大手町に開設した「Inspired.Lab」
新施設は、地下鉄・大手町駅に直結する「大手町ビル」の6階に約1000平方メートルの広さで開設された。同ビルには、FinTechベンチャーなどが入居する「FINOLAB」や大企業のデジタルビジネス部門の拠点もあり、三菱地所が日本のビジネスイノベーション創出の場と位置付けている。
Inspired.Labでは、人工知能（AI）やIoT、クラウドコンピューティング、ロボティクス、ライフサイエンス、ゲノムといった先端のテクノロジを活用し、産業構造を変革する可能性を秘め、世界に通用する日本発のイノベーションの創出がテーマとなる。SAPのテクノロジやデザインシンキングを核とするフレームワークを通じ、同社と三菱地所が新興企業を支援しながら、大企業とのコラボレーションを推進していけるようにする。
施設内にはオフィスやラウンジ、デスクエリア、ミーティングスペースといった設備に加え、3DプリンタやNC旋盤といった製造・加工機器を備える「工房」が設けられている。Inspired.Labに入居する新興企業は、テクノロジを利用してアイデアを実際のモノとして製作・加工できることで、迅速に事業化の取り組みを進められるようにした。
SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏
同日記者会見した代表取締役会長の内田士郎氏は、特に国内の大企業やスタートアップ、ベンチャーキャピタル、アクセラレーター、東京大学などの学術機関ら156の組織が参加する「Business Innovators Network」を強みに挙げる。Inspired.Labを「45年以上に渡るSAPの経験を通じてイノベーションを生み出す場」とし、「SAPが世界にERPのエコシステムを作り上げたように、今後はイノベーションのエコシステムを日本で作り上げていく」と内田氏は抱負を述べた。
エンタープライズとベンチャーやアカデミア、キャピタルが有機的に“つながる”「Business Innovators Network」によるエコシステムが大きな特徴になるという
併せて発表したSAP.iO Foundry Tokyoは、テクノロジを活用したソフトウェア開発からメンターによる事業戦略の策定支援、共同での営業といった広範な支援策を新興企業に12週間に渡って提供する。第1期は同日から4月1日まで希望企業を募集し、審査を通じて6～10社を選出、6月1日から9月1日まで実施し、選出された企業は最終成果をプレゼンテーションする。
SAPは、2017年に新興企業向け投資ファンド「SAP.iO」を設立、米国サンフランシスコを皮切りにドイツやフランス、イスラエルに展開しており、東京は7番目。これまでに約100社を支援しているという。
「SAP.iO」の概要
Inspired.Labの責任者を務めるバイスプレジデント チーフトランスメーションオフィサー兼デジタルエコシステム統括本部長の大我猛氏によれば、これまでも同社は、日本の顧客企業を米国シリコンバレーの施設に招いてデザインシンキングなど通じたデジタル変革やイノベーション創出の取り組みを支援してきたが、「シリコンバレーの文化を日本でも感じてもらうだけではなく、SAPのフレームワークやBusiness Innovators Networkの“つながり”によって、日本の強みを生かしたユニークなイノベーションを生み出す場にしたい」と話す。
IoTやVR（仮想現実）といったテクノロジを体験できる機能を持つイノベーション施設は多いが、Inspired.Labでは実際にモノ作りまでもできるのがユニークな点となっている
