本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、富士通の塚野英博 代表取締役副社長兼CFOと、NECの森田隆之 代表取締役 執行役員副社長兼CFOの発言を紹介する。
「好調な受注状況は2019年度も続くと見ている」
(富士通 塚野英博 代表取締役副社長兼CFO)
富士通の塚野英博 代表取締役副社長兼CFO
富士通が先頃、2018年度第3四半期(2018年10〜12月)の連結決算を発表した。同社の副社長兼最高財務責任者(CFO)である塚野氏の冒頭の発言は、その発表会見の質疑応答で、受注状況の今後の見通しを聞いた筆者の質問に答えたものである。
同社によると、2018年度第3四半期の連結業績は、売上収益が前年同期比2.6%減の9773億円、営業利益は前年同期から392億円悪化して287億円の赤字。当期純利益も同416億円悪化して296億円の赤字となった。
塚野氏によると、減収については、携帯端末機事業の再編と個人向けPC事業が連結売上高の対象外 となった影響が大きい。また、営業赤字については、ビジネスモデル変革費用がかさんだ影響が大きい。そうした特殊事項の影響を除いた本業ベースでは、増収増益を確保していると強調した。
事業別の売上収益と営業利益については表の通り。中でも「テクノロジーソリューション」のサービスの売上収益が前年同期比3.8%増となり、ここに含まれるソリューションSIが同10.6%増となったのが目を引いた。
表:富士通の2018年度第3四半期連結決算における事業別の売上収益と営業利益(出典:富士通の資料)
2018年度通期の連結業績見通しは、売上収益が前年度比4.8%減の3兆9000億円、営業利益が同23.3%減の1400億円、当期純利益が同35.0%減の1100億円としている。
さて今回、2018年度第3四半期の業績を取り上げたのは、中国の景気減速が影響して同期の業績が落ち込む企業が増えてきているからだ。富士通も数字だけを見ると影響があったように受け取れるが、前述したように自社の特殊事項が大きかったようだ。
塚野氏は業績見通しの説明の中で、「年初から計画していた第4四半期計上の大型商談は獲得できるめどが立っている。この件を含め、国内のビジネスにおける受注残高はサービスおよびプロダクトとも積み上がっている」との受注状況を明らかにした。
これを受けて、筆者は会見の質疑応答で、2019年度(2019年4月〜2020年3月)の受注見通しについて聞いてみたところ、同氏は次のように答えた。
「国内企業のIT投資意欲は引き続き旺盛だ。最近ではデジタル変革への取り組みによって、新しいビジネスを創出する動きも活発化している。第3四半期に中国の動きの影響などは受けていない。受注は2019年度も引き続き好調に推移すると見込んでいる」
冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。
同時期にNECも決算発表を行ったので、同じ観点で次に紹介し、最後に両社の動向を踏まえて考察したい。