つらいときのニーチェの言葉
『ニーチェ入門』(竹田青嗣著、筑摩書房)の表紙には、「ニーチェは答える。世界と歴史の時間にはどんな『意味』も存在しない。それにもかかわらず君は生きねばならず、『なんのために』ではなく『いかに』生きるかを自分自身で選ばなくてはならない」とあります。常に歯切れよく、深く鋭い洞察力、もやもやしていることを一言で明確に表し、不撓不屈の魂、現状より常に前進する意思などを刺激される方も多いと思います。
ひとり情シスの方が、たった一人でトラブルに立ち向かい、絶体絶命の中で事態を収束に持ち込む際や、社内と経営層、加えてエンドユーザーの間に挟まれてしまうときなど、日々の苦労は枚挙にいとまがありません。そんなひとり情シスの方に当時の苦労話を聞いていたら、「まさにニーチェの言葉を常に心に持っています」という方がいらっしゃいました。私も少しはかじったことがありましたが、もう一度しっかり読むきっかけになりました。
ニーチェ全集の中の「ひとり」の文字は895個
そして、『ニーチェ全集』(全19巻、ちくま学芸文庫)を早速購入し、読みふけったのでした。教養がなければ理解できない部分や、説明のロジックが難解な部分もあるので、大変苦労しました。正直、理解できていない部分も多かったです。しかしその中で、「ひとり」という言葉は、895個あることが分かりました。自分で調べただけなので、正確な数字かといわれると自信がありませんが、おおよそ正しいのではないかと思います。
『ニーチェ全集』(全19巻、ちくま学芸文庫)
そして、その「ひとり」を含んだ部分をしっかりと読み、拙著『ひとり情シス』(東洋経済新報社)の行動指針に関係しそうな約100の文章に抜き出しました。その中には、厳し過ぎる言葉も少なくありませんでしたが、ほとんどは自身が苦しいときやひとりで判断を強いられるときなど、とても参考になると思われる言葉が散りばめられていました。
毎日ニーチェの言葉を知る
そこからさらに厳選し、カレンダーに収まる31個の文章に絞り込みました。この作業は、とても難しいものでした。また、苦しいときに適したアドバイスもあれば、状況が良いときに聞いた方がいいものもあると分かりました。感情のバイオリズムは、28日周期で高潮期と低潮期が繰り返されます。そこで、この高低に合わせて、メンバーで意見交換しながら、言葉を並び替えました。
もちろん、個人の感覚で選定しているので、人それぞれで意味の受け取り方は異なるかもしれません。全信頼を持ってお勧めできるものではありませんが、下記にその中から一部を紹介します。ひとり情シスの方が、孤軍奮闘している光景が目に浮かぶのではないかと思います。
- ただひとり判断能力ある審判者たり
- ひとりの人間の生涯はかくも長々とした課題と意図の遂行
- 高く登ると、わたしは常にひとりぼっちだ
- 公正中立にひとり立ちをつづける
- 偉大なもののみがひとり生き残る
- たけ高く、黙々として、厳しく、ただひとりして
お客さまの机で頑張っているカレンダー
毎年10月の下旬に、私たちは「ひとり情シス大会議」というイベントを開催しています。前回は、参加者のお土産の一つに、「ひとり情シス・ニーチェ日めくりカレンダー」を用意し、会場の席上に置いておきました。最初は戸惑いもあったようですが、気に入っていただけたようで、とてもうれしかったです。その後、年賀状などで「ニーチェ日めくりカレンダーは、会社の机の上にあって、毎日見ています!」などの連絡をいただきました。日本全国で活躍してくれているのだと、制作に膨大な時間を費やしたのですが、その苦労が報われた気がしました。
「ひとり情シス・ニーチェ日めくりカレンダー」
そして、そのうわさが少し広まり、カレンダーを希望する方が出てきました。あくまでイベント用に制作したものと、拙著『ひとり情シス』に目を通していただくことが望ましいと思い、ためらっていたのですが、今回、抽選で書籍とカレンダーをセットでプレゼントする運びとなりました。下記のリンクからお申し込みください。
・https://www.dellemc.com/ja-jp/one-man-it/reprint/campaign.htm
- 清水博(しみず・ひろし)
- デル 上席執行役員 広域営業統括本部長
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横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のダイレクターを歴任する。
2015年、デルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手がけた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在従業員100~1000人までの大企業、中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。著書に「ひとり情シス」(東洋経済新報社)。Amazon.co.jpのIT・情報社会のカテゴリでベストセラー。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。