このコンセプトは、単にデータの自律性や匿名性のみに関するものではない。Hahto氏は、「このデジタルツインは、ユーザー個人との結びつきを消したいときに利用できる。実際のユーザーのデータと結びつけることなく、Auroraネットワーク上で機能する、ユーザーの情報を要約した存在を作ることができる」と述べている。
Auroraはデジタルエコシステムとなるため、このシステムに関わるあらゆる企業や組織にもデジタルツインが用意される。このアプローチによって、企業や組織は福祉データベースからメリットを得られたり、ほかのサービス提供主体とも効率的に協力できるようになるという。
当然、サービス提供主体の間では競争が起きると考えられる。Hahto氏は、悪質な企業はこのシステムを利用して経済的な利益を得ようとするかもしれないというリスクがあることを認めている。
例えばある企業は、偽のアカウントを作成して不正に自社の評価を上げ、重み付けの係数を操作して、よく利用されるサービスに選ばれやすいようにするかもしれない。
これに対しHahto氏は、「Auroraには自由があるが、無法地帯ではない。誰かが常に現実世界で行動の責任を負うようなガバナンスの仕組みがある」と反論している。
「ネットワークの中の安全で公正性が高い部分(政府のサービス提供主体はその部分で見つかる可能性が高い)にはユーザーが集まりやすいと考えられるため、企業がその部分に参加し、そのネットワークのルールに従うことにはメリットがある」(Hahto氏)
フィンランドが福祉国家として高い評価を受けていることを考えれば、Auroraの機能の中で民間企業が重要な役割を果たすことに対しては、外国から驚きの目が向けられるかもしれない。
また、同国政府がこの4年間、社会福祉事業や医療制度を民間企業に開放する意思を示して議論を呼んできたことを考えれば、フィンランド国内でも驚きを持って受け止められる可能性がある。