日本気象協会(JWA)は4月23日、気象条件から商品需要を予測するサービス「売りドキ!予報」の関東版サービスの提供を小売業向けに開始した。予測データを提供する対象商品を550カテゴリー以上に分けた「スタンダード」(月額7万円)と、約120カテゴリーに分けた「ライト」(月額5万円)の2プランで販売する。主なターゲットは中規模以下の小売事業者で、2019年夏に全国版の提供も予定している。
「売りドキ!予報」画面イメージ(出典:JWA)
JWAは、2014年から3年にわたって経済産業省の補助による実証実験などを通し、商品需要予測の精度向上に取り組んできたという。その中で、気象データは経済活動に利用できることを実証し、2017年4月に事業化に至ったとしている。
これまでの成果として同社の商品需要予測プロジェクトプロジェクトマネージャーを務める本間基寛氏は「大手製造小売業を中心に約40社と契約し、約3億円の売り上げを達成した。食品製造、小売では、廃棄ロスの削減や輸送にかかるCO2の削減を実現し、アパレルでは販売価格を在庫量によって調整することで販売利益を増やした」と語った。
一方、従来の顧客企業の大半は大手で、中小規模以下の小売事業者は少なかったという。その理由として、これまでは顧客ごとにサービスをカスタマイズしていたため、数百万円程度の導入コストがかかっていたことを本間氏は挙げた。そこでJWAは、中小規模以下の小売業者に向けて今回のサービスを提供することにしたと本間氏は説明する。
気象条件と食品需要の関係について、JWAは2014~2016年の2~3月に「暑い日に売れる商品」と「寒い日に売れる商品」を調査した。その結果、精肉カテゴリでは暑い日は焼き肉、寒い日はしゃぶしゃぶ肉が売れることが判明。そして、2017年2~3月にある店舗で実証実験を行い、暑い日に焼き肉、寒い日にしゃぶしゃぶ肉の棚割を強化した結果、比較店舗は売り上げが去年から落ちた一方で、前年比101%と売り上げを維持した。また、売り上げは比較店舗より10.5%高かったという。
同サービスで特に印象的なのは、Twitterの投稿を独自に解析して表示する体感気温の機能だ。「肌寒い」「汗ばむ」など9種類の指数を表示する。体感気温を組み込んだ理由として商品需要予測プロジェクトサービスプランナーを務める齋藤佳奈子氏は「実際の気温と体感気温が一致するとは限らない。同じ25度~30度ぐらいの気温でも7月前半は暑がる人が多い一方で、8月後半になると体が慣れてあまり感じなくなる傾向がある」と話した。なお、2019年のゴールデンウィーク序盤は、体感気温が「寒い」と表示されており、おでんが「超売りドキ!」とされていた。
JWAの齋藤氏
予測の精度に関してJWAは、台所洗剤のような「なくなったら買う」ものよりも煮物やスポーツドリンクなど、需要が気象条件に左右されやすい商品ほど正確に予測できる傾向があるという。注意点としては、需要は気象条件だけではなく価格などの影響も受けるため、あくまでも参考値として使ってほしいとのことだ。
今後のアップデートについて齋藤氏は「立地条件ごとに降水量の影響を反映させることを目指している。駅直結の店舗は雨により売り上げが伸びると言われているが、全体で見ると下がるので、現時点では降水があると売り時指数が下がる設定にしている。今後は『駅ナカ店舗』などの設定も加えることで、実際の売り上げとの差を減らしたい。その他、利用する中で要望が出てくると思うので、それを受けて改善していきたい」と述べた。