海外コメンタリー

エンタープライズAIの2019年、今知っておきたいこと(後編)--いかに取り組むか、課題は - (page 5)

Nick Heath (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2019-05-09 06:30

難関

 現実的な観点に立ってMLプロジェクトで達成できるものごとを考えるのが重要だ。Gownder氏は先のレポートで、患者の治療方法を見つけ出すための支援を提供するという、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターによる「IBM Watson」を使用したプロジェクトが6200万ドルを投資した末に頓挫したことを引き合いに出し、野心的すぎる目標を置いてしまうのがよくある失敗だと述べている。

 一般的に、MLを活用したテクノロジーを採用する際にはその目標が高くなりすぎないようにするとともに、完璧な成果が達成されることは滅多にないと理解しておく必要がある。音声認識には認識エラーがつきものであり、顔認識は厳格に統制された状況下でなければ誤認する場合もしばしばある。こうしたシステムの多くが人の置き換えではなく、人が判断しなければならない選択肢を絞り込むことで、人間の判断力の拡大に手を貸そうとしているのは、こういった欠点があるためだ。作業に携わる人の数を減らすことは可能かもしれないが、多くの役割を完全に自動化するのは、少なくとも今の段階では現実的ではない。

 あまりにも拙速かつ過度な自動化がもたらす危険についてはGownder氏も先のレポートで述べており、自動車メーカーTeslaの例を引き合いに出している。Teslaはある種の作業がロボットには向いていないという結論に至った結果、生産ラインから外した人間を元の職場に戻したという。

 Gownder氏は「しかし、人間を元の生産ラインに戻して以降、Teslaの『Model 3』の生産台数は2018年1月のわずか1825台から7月12日に1万4250台となり、米国で最も売れた自動車の1つとなった」と記している。

 MLプロジェクトの実施については、データ科学の専門家を見つけるというさらに厄介な問題に直面している企業もある。例を挙げると、O'Reillyの調査に対して回答者の半数以上が、MLの専門家とデータサイエンティストが自社に必要だったと答えている。O'Reillyの別のレポート「Evolving Data Infrastructure」(データインフラの進化)においても、データ科学とデータエンジニアリングは、企業がアナリティクス関連のスキルギャップを感じている最大の領域だと記されている。

 ウォーリック・ビジネス・スクールのSkilton氏は「テクノロジーとそれが約束するものはここに存在している。問題は実際のところ、データのタグ付けと、企業内において『学習を始められるようなデータをどのようにして準備すればよいのか?』ということを理解するための知識とスキルの獲得となっている」と述べた。

O'Reilly
提供:O'Reilly

 これらのちょっとした問題はあるものの、企業はMLテクノロジーの実験にますます力を入れるようになっている。Skilton氏によると、2019年は企業が「人の能力を拡大し、より生産的にするために、人の知識から機械の知識に移行していけるよう」、MLの難関に取り組むうえで最適な年だという。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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