海外コメンタリー

スポーツで活用されるAI--IBM Watsonがサッカーチームにもたらした真の成果とは

Mark Samuels (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2019-06-14 06:30

 イングランド7部リーグに所属するサッカークラブチームであるリアザーヘッドFCはセミプロチームであり、チームの選手は配送ドライバーや自動車のセールスマン、店舗の店員などから構成されている。フルタイムで稼働しているプレミアリーグのチームであれば、マネジメントスタッフのためにレポートを用意してくれる専任のスカウティング要員も配置できるだろうが、セミプロクラブにはそのような財政的余裕はない。

 リアザーヘッドFCでは、先駆的な実験として大手IT企業であるIBMと協力し、「Watson」の技術を使って選手やチームの成績を改善する試みを進めている。この取り組みの目的は、デジタル変革は企業の経営陣だけのものではないことを示すことだ。テクノロジーはサッカーを変容させつつあり、ゴールラインテクノロジー(ゴール判定に用いられる技術)やビデオのリプレイによる判定補助は、審判に試合を見るもう1つの目を与えてくれている。またピッチの外でも、各チームのコーチ陣は動画やビッグデータを使って選手のパフォーマンスを評価している。最近では、人工知能(AI)をクラブの重要な意思決定に使用している場合もある。

 リアザーヘッドFCのマネジメントチームは、IBM Watsonと共同で、今シーズンから試合前・試合後の分析と、対戦チームのスカウティングに関するAIプロジェクトに取り組み始めた。今回話を聞いたMartin McCarthy氏は、同チームのアシスタントマネージャーを務めている。

 McCarthy氏は「チームでこのツールを使ってみたが、非常に役に立った」と話す。「Watsonは敵チームと戦うのに役立ち、私個人にとっても、クラブにとっても有益だった。このツールは過去のパフォーマンスや次の試合について調べるのに使えたほか、選手との関係性を構築するのにも効果があった。AIの意思決定からは感情が排除されているため、えこひいきが起こらない。ただ、よりよい決断を下すためのファクトを提供するだけだ」

 ここにテクノロジーが担うべき役割の1つがある。IBMのマスターインベンターJoe Pavitt氏は、同社がリアザーヘッドFCに実験について打診した際、同クラブは歓迎する雰囲気だったと述べている。

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