IDC Japanは6月20日、国内における第5世代移動体通信(5G)の市場予測を発表した。全国で5Gが利用可能になるのは2025年ごろで、通信サービスは当面、既存の4G/LTEと5Gが並行して提供されることになると見込んでいる。
日本では、2019年に5Gのプレサービスが、2020年に商用サービスがスタートする見通しとなっている。既存の4G/LTEと比べて、「高速大容量」「多数同時接続」「低遅延」という特性を有しており、およそ10年ぶりに通信規格の世代交代となる。これまでになかったユーザー体験を可能にするとともに、産業界にデジタル変革をもたらす新たな通信基盤として大きな期待が集まっている。例えば、高精細映像のリアルタイム配信や人工知能(AI)による工場設備の予知保全、ロボットや建設機械の遠隔操作など、さまざまなイノベーションの創出が考えられる。
予測によると、移動体通信事業者(MNO)の5G向けインフラ投資は、2021年ごろから加速し、2023年には約8割が5G向け投資に振り向けられる。5G対応の携帯電話は2019年第4四半期(10~12月)に出荷が開始されると見ている。この時点では、ごく少数のハイエンド端末が出荷されるにとどまるが、2023年には約870万台の出荷になると見込む。これは市場全体の28.2%を占めるに過ぎず、半数を超えるのはもっと先になる見通し。
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「5G対応携帯電話の普及速度は比較的緩やか」とIDC Japanでコミュニケーションズ担当リサーチマネージャーを務める小野陽子氏は話す。現在展開されているスマートフォン向けの主要なサービスは4G/LTEで十分なユーザー体験が得られることも、その要因の1つとなっている。
5Gを利用可能な通信サービスの契約数については、5G対応携帯電話の普及と連動して増加するとIDCは見ている。産業分野でのIoT回線としての活用なども含め、2023年には3316万回線で、モバイル通信サービス全体の13.5%を占めると予測する。料金については、「海外で先行するキャリアと同様、携帯電話向けは容量制限プランで提供を開始するのではないか」(小野氏)としている。
「全国レベルで5Gが利用可能になるのは2025年ごろになる」(同氏)とIDC Japanは分析する。
一方で、5Gネットワークは、他の通信技術と補完関係にあり、当面は4G/LTEと5Gが並行して提供されるほか、DX関連では容量・遅延・安定性・コストなどの多様なニーズに対応するため、公衆網から独立したローカル5GやWi-Fi、固定通信サービスなどの通信技術からのリプレースや複数技術の組み合わせによる提供が進むとしている。
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そうした市場予測を踏まえた上で、同氏は、ITベンダーやサービス事業者に向けて次のように提言する。「5G対応携帯電話の普及速度は期待よりも緩やかであると見込まれる。市場の立ち上がり速度に過度な期待はせず、少し先に来るであろうイノベーションに備えるべきである」
さらに、本質的な5Gの価値を享受できるようになるには、2025年まで待つ必要があるとしつつも、諸外国との競争やデジタル変革のけん引役を期待する際に“キラーユースケース”がないといった「鶏が先か卵か先か」の議論よりも、まずは始めてみることが重要であるとした。