KPMGコンサルティングは7月17日、6月に発表した「KPMGグローバルCEO調査2019」の結果に関するメディア向け説明会を開催した。デジタル変革やサイバーセキュリティなどITにまつわる質問の中ではデジタルリーダーを自覚する日本企業のCEO(最高経営責任者)が77%に上り、これに対する実情などが紹介された。
同調査は日本を含む11カ国の1300人のCEOを対象に、景況見通しや経営リスク、成長戦略、経営トレンドなどに対する意識を尋ねたもの。調査期間は1月8日~2月20日。回答結果の速報は6月上旬に発表されている。
KPMGコンサルティング 代表取締役社長兼CEOの宮原正弘氏
同日の説明会では、代表取締役社長兼CEOの宮原正弘氏が、グローバルと日本の回答結果の比較から読み取れる傾向を解説した。景況見通しでは、米国を除く多くの国のCEOが、先行き不透明感が高まっていると回答。経営リスクでは、トップに日本およびグローバルとも「環境/気候変動」が挙げられた。また、「最先端技術/破壊的技術」「サイバーセキュリティ」もともに前年から順位が上昇している。
ITにまつわるトピックとしては、「デジタル変革」「サイバーセキュリティ」「デジタル人財」の3つが挙げられた。
デジタル変革関連では、「自社の技術戦略を自らリードしている」と答えたCEOの割合が、スペインの90%を筆頭に11カ国全てで7割を超えた。日本は77%で下から2番目。この結果を見て宮原氏は、「違和感を覚えた」と語った。
自社の技術戦略を自らリードしている」と答えたCEOの国別の割合
この調査の対象企業の業種は多岐にわたっており、製造などビジネスで技術の比重が高い特定の業界に偏重しているわけではないという。別途同社が実施した「2019 CIOサーベイ」では、RPAなどを使って今後5年以内に業務を自動化すると回答した企業が日本の73%を筆頭に、中国では55%(6位)、米国では36%(18位)だった。一方、今後3年以内に根本的な業務変革を行うとした企業は、中国が48%(7位)、米国が43%(10位)だったのに対し、日本は23%(16位)と低い。
RPAなどテクノロジーを活用した業務の自動化について、日本は近視眼的な傾向にあると指摘された
宮原氏によれば、RPAについて日本では、業務プロセスの一部に導入するだけでも手作業に比べて大幅な処理時間の短縮効果などを得られることから人気が過熱している。ただ、そこで活用が滞ってしまっている。しかし日本以外では、上記の調査結果のように根本的な業務変革に向けて戦略的な取り組みになっている。こうした背景から同氏は、「自社の技術戦略を自らリードしている」と考える日本のCEOが多いとの回答に違和感を覚えたという。
「日本のCEOは、グローバルと同様に現状のままでは成長できないと危機感を抱いているが、具体的にデジタルやテクノロジーをどう活用するかが分からない。取りあえずデジタル変革のチームやCDO(最高デジタル責任者)を置いたというのが正直なところではないか」(宮原氏)
この他の項目でも、サイバーセキュリティではこれを「競争優位性を生み出す重要な戦略」と考えるCEOは、米国が81%、中国が72%だったが、日本は58%だった。「グローバルでは、セキュリティへの積極的な取り組みが信頼の醸成につながり、ひいては売りにもつながると考える傾向にある」(宮原氏)
サイバーセキュリティ戦略への意識
また、デジタル人財に関しては、人材不足を挙げるCEOがグローバルで67%に上り、3年連続で増加した。ここでは、テクノロジーと人材の双方にバランス良く投資し、人材を獲得するだけでなく、その人材が持つ能力や感性などを有機的に組織内へ取り込み、持続的に人材が活躍できる環境作りが重要になるとした。人材獲得が難しい場合には、自社に足りない部分をその部分に強いベンチャーなどと協業することで、双方にとってメリットのある取り組みを実行していく。「よく大企業は“上から目線”でベンチャーに関わろうとするが、対等な関係を構築しないと、パートナーに逃げられてしまうだろう」(宮原氏)