経営トップに聞くデジタルの意識--ジョンソンコントロールズのオリバー会長兼CEO

國谷武史 (編集部) 2019年07月22日 06時00分

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 ビルなどの制御システムやエネルギー管理システムを手掛ける米Johnson Controlsは、約130年の歴史を持つ伝統的なメーカーだが、ITを活用したビジネスのデジタル化を推進している。会長兼最高経営責任者(CEO)のGeorge R. Oliver氏に、同社の取り組みやデジタル変革に対する見解などを聞いた。

--Johnson Controlsは長い歴史を有するが、デジタルによってどのようなビジネスを展開しているのか。

 2016年にJohnson Controlsと防犯システムを手掛けるTycoが合併したことによって、デジタル変革への取り組みが本格化した。Johnson Controlsは、ビルの管理や制御において長い歴史を持つが、Tycoはデジタルに強いセキュリティのリーダー企業であり、将来のビルやインフラの管理ではこの2つを統合すべきだと考えた。

Johnson Controls 会長兼最高経営責任者のGeorge R. Oliver氏
Johnson Controls 会長兼最高経営責任者のGeorge R. Oliver氏

 われわれのビジョンは、製品や技術を統合することによって優れたインフラを提供し、最も効率的で最も安全な環境を提供することにある。さまざまなプラットフォームから収集するデータを活用し、ビルや施設の利用効率を高めることや、今まで対応できなかった顧客の課題解決につなげるといった効果を期待している。

--デジタル変革に取り組むのは、既存のビジネスモデルを破壊するような新しいプレーヤーの存在が背景にあるのか、それとも既存のビジネスモデルを変えていく主体的なものなのか。

 われわれの場合、業界のビジネスモデルを破壊するような新しいプレーヤーが登場したというような背景ではなく、当社として、デジタルに大きなビジネスチャンスがあると純粋に考えたからだ。先ほど述べたように、今まで別々に存在したプラットフォームを集約し、1つのソフトウェアアーキテクチャーに統合する。アジャイルにソフトウェアを開発し、これをマイクロサービスを提供していく。データを活用することによって、例えば中核事業の1つであるHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning:エネルギー効率に優れた空調システム)のパフォーマンスを高めることができている。つまり、今後デジタルテクノロジーによってこの分野がさらに拡大することを期待しての動きと言える。

--トップ自らがそうしたITの用語を話すのは珍しい。トップとして、デジタルテクノロジーをどのように捉え、全社に展開しているのか。

 デジタルの能力を社内で活用することは、ビジネスのスピードを高めることにつながる。最新のデジタルテクノロジーを利用することで新しい市場も創出され、それによって顧客の課題解決あるいは効率化につながり、顧客満足度をより効率的に高めていける。社内のオペレーションと市場の2つの方向でデジタルを活用していくべきだと考えている。

 会社の将来を考え、主要な事業ドメインのHVACでは住宅用から大型の商業施設に至るまで広範なポートフォリオにデジタルを取り入れていくが、これとは別にインフラそのものにデジタルを導入するという事業ドメインもある。いずれも新しいテクノロジーが顧客に新しい価値を創造し、大小さまざまな課題と掛け合わせることでも、それらの解決につながる可能性が出てくる。

--デジタル変革の取り組みがどの程度顧客に浸透していると考えているのか。

 顧客も、デジタルによる新しいソリューションを前向きに捉え、その価値を十分に認識してくれていると思う。例えば、もともとHVACはエネルギー効率の改善が顧客に貢献しており、さらにより高いセキュリティレベルの高いビル監視システムによって防火や防犯を支えている。その意味では、長年にわたって“デジタル”と言えるような取り組みを顧客に提供し続けてきた。IoTなどによる最新のデジタルソリューションも、顧客に提案し、顧客が抱える課題の解決に向けてどう活用できるかを顧客と一緒に取り組んでいる。

--社内ではデジタルにどう取り組んでいるのか、また、デジタルパートナーとはどのような関係を心がけているのか。

 社内には複数のデジタルチームと組織がある。あるチームは、デジタルをどう活用すれば、われわれのビジネスを改善でき、効率を高め、スピードを速くできるか、顧客に優れたサービスをどのように提供できるのかを考えている。それらの実行に必要なデジタルの能力も社内に確保し、必要な行動をできるようにしている。別のチームは、さまざまな中核事業を横断する形で活用可能なデジタルのソリューション開発へ純粋に取り組んでいる。こうした成果を統合する形で顧客に新しい価値として提供している状況だ。

 一例では、さまざまなビル関係のシステムからデータを収集し、データをクリーニングして、正規化し、分析を通じて新しいソリューションを提供する「Digital Vault」(Microsoft Azureをベースとした高度なビル管理のためのクラウドサービス)がある。これは高いレベルの施設運営を実現するために、われわれとパートナーが共同でアプリケーションを開発し、顧客に提供してるものだ。

 さまざまなテクノロジー企業とパートナーシップを締結しており、その際は必ずエコシステムを構築するようにしている。商業ビル向けのソリューションでは、その大半がエコシステムによって実現されている。テクノロジーパートナーと共同で顧客が抱える課題を抽出し、それを正確に理解する。エコシステムにわれわれはドメインプレーヤーとして参画しており、さまざまなパートナーと共同で顧客に最適なソリューションを提供する形だ。例えば、中東のプロジェクトではMicrosoftと共同で人工知能を活用したスマートビルディングソリューションを提供することになった。

--業績へのテクノロジーの貢献はどのように評価しているのか。

 数字で示すことができるような評価はしていないが、既に提供している多くのソリューションにデジタルを実装しているため、その意味ではテクノロジーの貢献は非常に大きなものだ。入退管理や不正侵入の検知、ビデオ監視に至るまで、いろいろなところにデジタルテクノロジーが実装されている。サービス関連も売上の25~30%ほどを占める。約65億ドルになるが、ここもかなりデジタル化されている。

--今後どのような領域にデジタルによるビジネスを拡大させていくのか。

 新しい分野へ進出するというよりは、引き続き中核事業に注力していく。HVACは市場で既にリーダー的なポジションにあるが、まだまだ成長の余地がある。再投資をすることで各市場に適した製品を展開することにより、成長を続けていく。ビルの管理や制御、セキュリティに関しても、データが連携するプラットフォームを構築することにより、顧客が今まで以上に高度なビル運営をできるようにする。オフィスや病院、スタジアムなど顧客の業界や施設に応じたアプリケーションを提供することで、それぞれの顧客にとって最適な運用と効率の向上を図れる価値を実現したいと考えている。

--日本市場ではどのように見込んでいるのか。

 われわれは日本で半世紀近く事業を展開している。その歴史の中で新技術の活用や提供に注力して顧客に価値を提供し続けており、デジタルソリューションについても、これまでと同様に取り組むことで顧客に貢献していきたい。

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