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教育IT“本格始動”

教育IT“本格始動”--疲弊する現場で進む教育ITの現実

武田一城 (ラック)

2019-10-07 06:00

 今回は、教育現場のIT環境の現状について、IT導入に必須となる「ヒト」のリソースを重点的に述べてみたい。教育ITに限らず、新しいことを始める際に最も重要なのは「ヒト」だ。もちろんIT導入では、ネットワークや情報端末など技術的な部分も欠かせないが、何を購入するかを検討したり、導入後のITシステムを運用したりするのは「ヒト」になる。教育ITを開始するには、何よりも人材をどうするかが最も重要になってくる。

30年間で半減した学校職員

 日本の学校は、海外の学校に比べて先生以外の職員が極端に少ないと言われる。学校の職員とは、統計上では事務職員、学校栄養職員など、「その他」に分類されている授業などを行わない先生以外の職員である。この連載で述べてきたように、現在の学校の先生は授業以外に、非常に多くの雑務を抱えている。そのため、少ないと言っても筆者を含む団塊ジュニア世代が初等・中等教育を受けた1980年代より、職員の方々が増えているのではないかと想像していた。

 そこで、文部科学省が毎年実施している「学校基本調査」という公開データから学校職員数の推移を調べてみたところ、この認識が大きく間違っていることが分かった。例えば、小学校の学校職員の推移を見ると、1980年代初めの約12万人をピークに減少へ転じ、2017年には約6万8000人と、半分近くにまで減少している(下記のグラフを参照)。


 1980年代は、筆者を含む第二次ベビーブーム(団塊ジュニア)世代が小学生だった時代だ。小学校数も現在より5000校ほども多い2万5000校もあったため、現在とは一概に比較はできないが、それでも学校数が2割ほど減少した上に職員数は半減と言ってもいい状況だ。つまり、学校自体もある程度減少したが職員の減少率の方がはるかに大きい。そして、小中学校の大半を占める公立の学校は、少なくとも財政的には地方自治体の一部だ。この数十年間で財政的にひっ迫している自治体が多い状況であるだけに、財政的な理由で人件費が削減されたという面も少なからずあったと思われる。

 さらに別の統計データを見てみると、意外なことが分かった。先生自体の数は、約30年間で多少減っているものの、この20年ほどではほとんど変わっていないのだ。しかし、実はその内訳を見ると、減少数では見えない待遇面の現実が見えてくる。それは、非常勤講師や臨時的任用(常勤)の先生の割合が年々伸びており、2011年には非正規の先生が全体の16%程度を占めていることだ。

 非常勤講師とは、授業のコマ数で報酬が支払われ、一般的に授業以外の職務はしない先生だ。業務時間を自由に選べる反面、夏休みなどの授業の無い期間は無収入となってしまう。そして、もうひとつの臨時的任用の先生は、採用方法が異なるだけで、正規採用の先生と同じ職務を行う(もちろん部活動なども例外ではない)という。正規採用と臨時的任用の先生の違いは、1年契約ということと、正規採用に比べて50~60%程度の報酬になってしまうことだけだという。つまり、このような先生が増えているということは、教育に関連する人件費が以前より抑えられていると言える。

 このような状況になった原因は、一般企業と同じく、2001年の小泉政権時代の規制緩和のよるものだった。具体的には、「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律(以下、義務標準法)」の改正だ。この法律は、各地方自治体の財政状況によって教育水準が変わってしまうことから、先生の人件費の半分を国が負担するとともに、その用途なども厳しく規定したものだった。この時の法律の改正によって、義務教育費国庫負担の対象に、非常勤講師を含めることが可能になったという。

 もしかしたら読者の皆さんは、一足飛びに日本の教育の闇の部分をご理解されたのではないだろうか。そう、2000年代の小泉改革によって派遣人材の適用範囲が大きく拡大され、それによって人材派遣モデルが大きく伸びた。しかし、それは日本中に3カ月更新などの不安定な不定期雇用の労働者が増えたということでもあった。つまり、この職員および教員(先生)の不足は、現在問題になっている「就職氷河期世代」の就職やその後に不安定な待遇が続いている問題などと同じ根の深い問題だったのだ。

 この状況で2006年に始まった地方公務員の定員削減計画がさらに追い打ちをかけた。先述のように地方財政は火の車で公務員の数を減らし、さらに公務員を非正規化することで、地方自治体は財政の健全化を目指した。職員および教員(先生)は地方公務員の30%を占めるという。そして、世は少子化の真っただ中であり、まず学校の職員の絶対数を減らし、教員(先生)も1学級あたりの児童・生徒数を減らすことで、その人員数を減らさない代わりに安いコストで使える非正規な就労形態が増えたと推測される。

 教育の成果は、なかなか目に見えない。学校が地方自治体や住民に利益をもたらすことを明確に説明するのは非常に困難だ。教育にかけるコストを減らしても、その悪影響が出るのは生徒たちが社会で活躍する数十年後だ。そのため、地方自治体への強いコスト削減圧力の結果として、少なくとも目に見える悪影響が出にくい教育が、コスト削減の絶好のターゲットになってしまったのだ。

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